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「コーヒー」を飲めるのは今のうち!?

「コーヒー」を飲めるのは今のうち!?

前回の緑茶に続き、コーヒーも毎朝飲んでいて、少し甘めで濃いめカフェオレにして朝はこれでスッキリ、かなり好きな嗜好飲料の一つです。
そんなコーヒーは、世界三大嗜好飲料の一つと言われていて、他のお茶(紅茶・緑茶)・ココアと共にカフェインを含有している事が共通点だそうです。
ということで、飲みすぎはよくないげど、気分高揚・眠気消失などの効果があるコーヒーについて色々と調べてみました。

1874年「放香堂」の店頭風
1874年(明治7年)茶・インド産コーヒー販売「放香堂」(神戸元町通)の店頭風景。出典:Wikipedia

コーヒーが飲料として利用されるようになったのは、6世紀頃のエチオピアとされます。当初は体調をととのえ、気分を高揚させる薬効を持った秘薬として始まりました。13世紀半ば頃より豆を炒って煮出して飲料とするようになり、アラビアを中心に主としてイスラム教の国々で愛用されたようです。
17世紀にヨーロッパに伝わり、日本へは18世紀後半(江戸時代後期)に長崎の出島にオランダ人が持ち込んだといわれています。

黒船来航と共に西洋文化が流入し開港地を中心として西洋料理店が開店するようになると、そのメニューの一部として1868年(明治元年)に正式にコーヒーが輸入が開始されましたが、コーヒーは外国人と一部の上流階級の日本人がたしなむ高級な飲み物だったそうです。

そのコーヒーが大衆に受け入れられ始めるのが明治後期。
1878年(明治11年)神戸元町に「放香堂(日本で最初の喫茶店ともいわれている)」、1886年(明治19年)東京日本橋「洗愁亭」が開店しましたが、1888年(明治21年)東京下谷黒門町に開店した「可否茶館(かひいちゃかん)」が日本の近代喫茶店の始まりだとされます。この店には玉突きやトランプ、図書などの娯楽設備や便箋・封筒などの文房具も揃えてあったそうです。

その後、浅草や大阪、銀座、京橋などに次々とコーヒー専門店がオープンし、当時のハイカラな文化人たちが文学や芸術、西欧の思想などを論じる絶好のサロンとなりました。

「珈琲入角砂糖」広告・商標類(明治大正時代)
「珈琲入角砂糖」広告・商標類(明治大正時代)。出典:Waseda University Library

コーヒーや紅茶へ入れる甘味料として、白砂糖を小さな立方体に固めた角砂糖は、日本では1908年(明治41年)に松江春次(実業家)によって初めて作られました。

ヨーロッパで、茶や砂糖が一般庶民には高価だった17世紀の初め頃、砂糖も薬屋で扱われる貴重な「薬品」でした。紅茶・コーヒーに砂糖をいれれば二重の効果が期待できるわけで、砂糖は貴族やジェントルマンといった高貴な身分の人々のステイタス・シンボルになったようです。その頃にロンドンを中心に普及したコーヒー・ハウスで、紅茶・コーヒーに砂糖が入れられるようになったと言われています。

1901年Kato Coffee Co.パンフレット表紙。出典:Wikipedia
1901年パンアメリカン博覧会のKato Coffee Co.パンフレット表紙。出典:Wikipedia

1901年(明治34年)にニューヨーク州バッファローで開催されたパンアメリカン博覧会で「ソリュブル・コーヒー」と名づけて発表、その製品を出品販売しました。

コーヒー普及のきっかけを作ったインスタントコーヒーは、1899年(明治32年)にアメリカに在住していた科学者・加藤サトリ博士が真空乾燥法による製造を成功し、日本人が初めて発明したとされます。ところが、当時の日本ではインスタントコーヒーの販路がなく、アメリカに渡って1901年のパンアメリカン博覧会で発明品を公開、1903年(明治36年)に特許取得しますが商品化には成功しなかったようです。

1953年「ニュー ネスカフェ インスタントコーヒー」アメリカの広告
1953年「ニュー ネスカフェ インスタントコーヒー」アメリカの広告。出典:Flickr
1984年ネスカフェゴールドのセレナーデ・デラックス・エスプレッソ
1984年ネスカフェゴールドのセレナーデ・デラックス・エスプレッソ。出典:Flickr

のちインスタントコーヒーは、1938年(昭和13年)にスイスのネスレ社が別の方法で完成させ「ネスカフェ」の商品名で発売しました。その後、大きな成功を収め、インスタントコーヒーの代名詞として知られるようになります。

1960年の「森永インスタントコーヒー」
1960年の「森永インスタントコーヒー」雑誌広告。出典:Flickr。森永製菓は「インスタント」という言葉を世に知らしめた先駆者でした。
1960年の「マックスウェル」
1960年の「マックスウェル」出典:書籍より。1960年(昭和35年)にゼネラルフーヅ(現・味の素AGF)から発売されたインスタントコーヒー。

大正・昭和の時代に入ってコーヒー店も増加し大衆化が進み、1937年(昭和12年)~38年頃まで黄金期が続きましたが、まだ一般家庭の食卓には普及していませんでした。
1939年の開戦により需要も停滞し輸入量は激減、以降はしばらく輸入統制が続きましたがコーヒー豆は1960年(昭和35年)に輸入自由化、インスタントコーヒーは1950年代から輸入され始めていましたが1960年に森永製菓が日本で初めてインスタントコーヒーを製造発売すると国産化が進み、また1961年にはインスタントコーヒーも自由化されて、一般家庭にコーヒーを広く普及させる契機となり、日本人の生活に定着していきました。

そして高度経済成長期に一躍コーヒーブームとなり、コーヒー店・喫茶店も町に氾濫していきました。喫茶店の記事はこちら→ホッとする空間を味わう「喫茶店」
現在では消費量世界第4位(1位・EU、2位・アメリカ、3位・ブラジル)のコーヒー大国となっています(味の素AGF・世界と日本のコーヒー豆事情、調べ)。

ちなみに、喫茶店の数は1981年にピークを迎え、減少傾向を見ると今はピーク時の6割減になっていると思われます。この間、コーヒーチェーン店の躍進が考えられます(全日本コーヒー協会、調べ)。

コーヒーとコーヒー豆

なお、全日本コーヒー協会の2020年度統計資料によると、一人1週間当たりの飲量は年々微妙に増加傾向で11.53杯、年齢別では60歳以上男性が14.51杯と一番多く(昭和に流行った喫茶店のせいでしょうか)飲んでいます。また、飲用場所は店が減り家庭が増えています(感染症の影響だと思われます)。

しかしながら、世界的に需要が高まり高騰してきていて、少し前のニュースでは、2050年に気候変動によりアラビカ種のコーヒー栽培適地が現在の50%にまで減少する「コーヒー2050年問題」が指摘され、それこそ薄~いコーヒーやコーヒー豆を使わない植物の茎・根・種などから作られた代用コーヒーになったりして、これから普通に手軽に飲めなくなるかもしれません。

余談で、薄~いコーヒーといえば滅多に注文しないアメリカンコーヒーを思い出しますが、日本語を味わう辞典によると…
アメリカンコーヒーとは、アメリカっぽいコーヒーという意味の和製英語で、コーヒーを湯で薄めたもの。または、「アメリカン専用にローストしたコーヒー豆で抽出したもので湯で薄めたものではありません」といって日本の喫茶店で出される湯で薄められたコーヒー。その昔、アメリカ人が日常的に飲んでいたコーヒーが、ローストが浅く薄めに作られていたところからこの名があるらしい(諸説あり、コーヒー豆節約法とも)ですが、今やアメリカンなコーヒーといえば、こってりローストしたこげ臭いコーヒーを指すようになったので、「アメリカンコーヒー」も古語の部類に入ってもよいのではないかと思われます。とはいえ、「湯で薄めたコーヒー」に適当な名称が見あたらないせいか、今でもコーヒーショップでは「アメリカン」で通っているようす。このアメリカンコーヒーの影響で、水で薄めた酒、あっさりした性格、中身の薄い企画書などについても「アメリカン」と呼ばれた時代があったとか。
※本当は“コーヒーを湯で薄めたもの”ではないようですが、そんな感じがしてしまうのですよね。

出典:味の素AGF/コーヒーの歴史
出典:世界と日本のコーヒー豆事情
出典:UCC上島珈琲/コーヒー百科
出典:コーヒー
出典:インスタントコーヒー
出典:コーヒーの歴史
出典:アメリカン・コーヒー
出典:日本語を味わう辞典

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