共に飲み交わす「日本酒文化」
味わい、香り、辛口か甘口か、銘柄、料理との相性…は考えませんでした、、が、お酒好きな自分も、以前は日本酒に凝っていました。
でもある時、気が付いてしまったんです、美味しいのは最初の1~2杯で酔ってしまうと、もうどうでもよくなってしまう事を。
そんなことを言っていたら、埒が明かないですね、失礼しました。
ということで、最初の1~2杯は味わって飲みたい日本酒について
日本酒のちょっと歴史
今から約2600年前の縄文晩期、中国大陸から九州北部に稲作が伝わり、比較的すぐに米が自然発酵してなんらかの酒が誕生したのではと言われています。
記録に残る記述がある書物は、713年以降に書かれたとされる「大隅国風土記(おおすみこくふうどき)」には、米を噛んで容器に入れ、一晩おくとお酒ができる「口噛みの酒」、716年頃に書かれたとされる「播磨国風土記(はりまこくふうどき)」、これには、“米にカビが生えたので、それを用いて酒を造らせ宴を開いた”と書かれており「カビ(麹)の酒」が登場します。
そして、日本最古の歴史書である「日本書紀(720年)」には、“木花咲耶比売命(このはなさくやひめ)が狭名田の稲で天坩酒を醸造した”という記述があるので、700年代には日本酒の元となるお酒は造られていたと考えられます。
ちなみに、“カビ”は“麹”を使った製法のルーツとされ、“噛む”という行為は“醸す(かもす)”に変化したと考えられています。
また、このころのお酒は米の粒が残り濁った状態で、「濁醪(だくろう)」と呼ばれていたとか。これが変化し「どぶろく」となったようです。
この白濁した「どぶろく」が時代とともに進化していき、江戸時代に今と同じような見た目のお酒(清酒)が完成したとされています。
出典:日本酒の起源はいつ?
出典:日本酒の歴史
神様と共に飲む日本酒
奈良時代には、酒造りは朝廷などで行われるようになるなど、豊作祈願などの神事に用いられていたようです。
「万葉集」では、“この神酒は わが神酒ならず 倭なす大物主の醸みし神酒 幾久幾久(この神酒はわたしが造った酒ではない。倭の国を創られた大物主という神の醸された神酒だ。幾世までも久しく栄えよ)”という歌もみられます。
また、“神酒(ミキ)”は「日本書紀」や「古事記」にも登場していて、聖なる飲み物として考えられていたことがわかります。
それに関連して、酒の神を祀る神社もいくつかあり、いまでも参拝することができます。
自然の力を畏敬し、日本酒は神がもたらすもので、酒に酔うことで楽しくもなり、何より神の恵みと考えていたようです。
できた日本酒は神前にそなえて祈り、その後村人たち全員で分けあって飲み、神と人、人と人との結びつきと信頼を高める特別な行為だったのでしょう。これは「神人共食(直会/なおらい)」と呼び、現代でも地鎮祭などで行われますが、世界でも今なお残っている珍しい風習だそうです。
そして、平安時代から見られる飲酒作法で、主と客とで3度の回し飲みをする「三献(さんこん)」という儀礼がありました。
三献・式三献(しきさんこん)
出典:コトバンク
日本の正式な饗宴で行われた儀礼的な酒宴の作法。肴(さかな)の膳を出して酒を3度すすめることを1献(1つの盃に1つの肴がつく)と数え、初献・二献・三献と膳を替えて3回繰り返す。「さんごん」「式三献」ともいう。平安時代から見られるが、次第に様式がととのえられ、室町時代に「式三献」の語が用いられるようになった。こんにち神前式や仏前式の婚礼で行う「三三九度」はこれをひき継いだものとされる。また、主に初献の肴として雑煮を用いたが、正月の祝い膳に雑煮を用いるのはこの名残とされる。
“日本酒を飲み交わす”ということは、同じ盃から酒を飲み一体感と信頼を得る大切な儀式だったのですね。
ちなみに、「献立(こんだて)」という言葉は、この「献(盃が一巡すること)」にどのような料理を手配するかという計画のことだそう。
現在のビジネスシーンでは、多くの宴席は無礼講になっていますが、礼講とは神に奉納した神酒を上の位の者からお酒をいただく直会(なおらい)のことで、この地位や身分の上下を取り払いそこまでの儀礼がない宴席のことを無礼講と言うのだとか。
“無礼な振る舞いが許される”という訳ではないので気を付けましょう。(はい!経験者は反省しましたが、後の祭り…)
今も生き続ける日本酒文化
お正月に節分、お花見にお月見と、季節の節目を祝ったり、祝賀会の鏡開きや結婚式の三々九度などの行事やお祝いの席など、日本酒をいただくことは、今でも当たり前の風景です。
飲食だけが目的なのではなく、“共に飲み交わす”ことにより親交を深めることができる、普段当たり前のように飲んでいた日本酒。遥か昔から日本で愛されてきたお酒だと思うと、古代のロマンに想いを馳せながら一杯だけじっくりと味わって飲みたいものです。今宵は一杯いかがですか…
-
前の記事
フーテンの寅さんは人気もの⁈ 2019.12.30
-
次の記事
日本酒が薄いサワーみたく飲めた江戸時代、などなど 2020.01.04