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「縁側」がなくなったせいでコミュニケーションが失われた⁈

「縁側」がなくなったせいでコミュニケーションが失われた⁈

現代の住宅は、“縁側(えんがわ)”がすっかり見られなくなってしまいました。
自分が住んでいた昔の家は、“縁側”と“縁台”がありました。今の家は“濡れ縁”があります。

縁側はガラス戸で外と仕切られた内部の場所のことで、廊下や出入り口として用いる板敷き状の通路のことを指します。濡れ縁は縁側のさらに外にある、雨を遮るものがない、雨が降りかかると濡れるという意味の外部の場所です。
縁台とは、 庭や露地などに置く、背もたれがない2人から3人座れる長椅子で、固定せずに移動できるベンチタイプのものを指します。家に縁側のない家では、これが縁側代わりになることもありました。

縁側
山形まるごと館「紅の蔵」 蕎麦屋の縁側
濡れ縁
濡れ縁と沓脱石(くつぬぎいし)
縁台
谷崎潤一郎 邸(1936-1943年)の縁台

縁側の起源

古墳時代(7世紀頃)、主室の前に簀の子(すのこ)の幅の広い縁側を設けていて控室や通路として使われていた簀子縁(すのこえん)ではないかといわれています。また、平安時代中期に完成した寝殿造りにある「ひさしの間(格子戸がある四方をぐるっと囲んでいる縁側)」というものが起源ではないかともいわれています。
なお、現存する最古の縁側は、奈良時代に建立された法隆寺東院の伝法堂だそう。

建物内に設けられるようになるのは中世からで、一般の民家にも普及したのは江戸時代の末。最初は建物の外に出ている濡れ縁でしたが、雨戸やガラス戸で覆われ、徐々に家の中に取り込まれていきます。
庶民の住居でも内部と外部との境に建具を設けるようになり、これを“縁側”と呼ぶようになりました。
江戸時代、農家の座敷の周囲には縁側があり、一方、長屋には縁側はありませんでしたが、玄関に“縁台”を出して、夕涼みや休憩の場として楽しんでいました。

団扇(うちわ)
納涼美人図(1800年)歌川豊広 作 出典:メトロポリタン美術館

言葉としての「縁側」

「縁」も「側」もいずれも端っこという意味で、いわばパンの耳みたいに“なくてもいい”ようなところであり、洋室が主流となった現代の住宅では、そんなあいまいな部分を設ける余裕もなく、あまり造られなくなっていきました。

縁側の役割

縁側には夏の暑さと冬の寒さを和らげる機能があります。戸外と縁側の間に一つ、縁側と室内の間に一つ戸や壁があり、縁側部分に空気の層ができ、これにより夏は太陽の熱を和らげ、反対に冬は断熱材となって外界の寒さを遮断してくれます。
また、秋は月見や庭の虫の声を鑑賞したり、春は庭木に咲いた花を家の中から眺めたりするなど屋外の景色を楽しむこともでき、季節の移ろいを感じることができる最適な場所になります。
さらに、縁側は社交の場でもあり気軽に集まれる場でもありました。ちゃんと家に上げるほどの関係ではない相手でも、庭から出入りできる縁側になら招き入れることはできるし、外出するような気負いなく出ていくことができる便利な出入り口でもあります。

そして、ばあちゃんとネコがお茶を飲みながら(ネコは飲まないけれども)日向ぼっこをする場所、そこへ近所のおっさんや宅配便のあんちゃんや怪しげな押し売りの男がきても茶飲み話だけして帰っていく不思議な場所、座敷の畳に直射日光が差し込まないように設けたもの、正月に余った餅を粉々にし広げて乾燥させる場所、雨の日に洗濯物を干す場所、夏に子どもはスイカを食べながら花火をし大人はビールを飲んでひっくり返る場所、ともいえます(笑。

つまり縁側は、休憩場所・簡単な接客・収穫物の乾燥の場・季節の情緒を感じる場など、様々な用途をもっていました。また内と外をつなぐ空間は中間にあることから、夕涼みや井戸端会議などの用途も担っていました。

縁側
縁側と沓脱石(くつぬぎいし) 出典:縁側の町家

出典:縁側
出典:縁台
出典:外界と室内をつなぐ縁側

復活してほしいな、縁側

相手が親しい人であってもそうでない人であっても“上がる”でもない“迎える”でもない感じで立ち寄って話すからこそ、同じ目線でほんのちょっとのコミュニケーションができる、ちょうど良い距離感を維持できる場として、家の内と外をつなぐ中間地点の縁側が重宝されていたのかもしれません。

しかし、和風の家が消えマンションを始めとする洋風建築が主流となった今、縁側も少なくなってしまいました。隣人や通りすがりの人との気軽なコミュニケーションが失われたのは、こうした建物の構造の影響があると考えられそうです。
そして現在は、スペースを食う上に和室が減ってきたことで真っ先に住宅から捨てられてしまい、ばあちゃんとネコが日向ぼっこできる幸せな場所はなくなろうとしています。

現代社会では、どうしても近隣との関わりは希薄になりがちで、でもこれからの高齢化社会では近隣同士が見守り合う社会になり、人と人がゆるくつながれる場所の縁側や濡れ縁や縁台を見直したほうがいいのかもしれません。

縁側のない住宅に住んでいる人が縁側を楽しむには改築するしかありませんが、気軽に設置できる縁台でもよさそうです。庭や玄関に縁台を置き、休憩するために使ったり、ガーデニングの一部にしたり、ちょこっと日光浴を楽しんだり、縁台に座ってお茶を飲みながら雑談をするご近所との交流も生まれるかもしれません。“袖振り合うも多生の縁”というように縁を大切にしたいですね。

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