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人と人とを結びつける箸渡しに寄り添う「箸置き」

人と人とを結びつける箸渡しに寄り添う「箸置き」

箸置きとは、箸を置くために用いる小物、箸が直接卓上に触れてしまうことがないようにするのための道具です。

飛鳥時代(7世紀頃)、神社で神々にお供え物を捧げる際に用いられたもの、両端が持ち上がり箸を包み込むような耳の形に似た素焼きの器で「耳土器(みみかわらけ)」と呼ばれていた箸置きが原型ではないかと言われています。
神に捧げる食べ物を清潔に保つため箸で盛り、その箸自体も清潔にしなければいけないということで箸先を汚さないために箸置きの原型となるものが使われました。

奈良平安時代には、天皇の正式な食膳や宮廷の儀式・饗宴で、馬頭盤(ばとうばん/頭のような形をした脚つきの皿)と呼ぶ台に箸とさじ(次第に廃れた)をのせ箸置きとして使用していました。

今に通じる箸置きが一般に普及したのは、卓袱台(ちゃぶだい)という丸や長方形の足つきの低い食卓が登場するのは明治中頃で、それ以降のことだそうです。
特にお客様をもてなす際に、箸の口に触れる部分が卓袱台に触れないために使われたそうです。
出典:箸置き

歌川国貞
歌川国貞(1786–1864)江戸時代 出典:メトロポリタン美術館

それまでは、日本には古来から大きな卓上で食材を並べて食すのではなく、一人ずつ「お膳」に乗せて食すスタイルが確立していました。
「お膳」は奈良時代の平城京跡から出土した、ひのきで作られた「折敷(おりしき/今もお茶事などで使われる足のない膳のこと)」から始まったといわれています。やがて「折敷」に足がつき、鎌倉時代に「お膳」の形になり、庶民に浸透したのは江戸時代後期のことのようです。しかし、庶民の場合は膳を使うのは何か特別の時だけで、一般に用いられていたのは箱膳(箱や引き出しの中に個人所有の器や箸をしまうようになっていて食事の時にふたを返して器を並べます)でした。
この「お膳」自体が箸置きの役割を持ち、箸は膳の左縁に箸先を乗せて使用していました。
その後、1877年(明治10年)卓袱台が登場し、1887年(明治20年)には「お膳」を廃し、食事用座卓の使用が始まるようになります。
出典:膳の始まりは奈良時代

箸置き

箸置きの数え方は、一客(いっきゃく)と言って、これはお客様をもてなすという用途による数え方からきています。一個と数えてもよいそうです。
出典:もののかぞえかた

箸置き
昭和時代の陶器製の野菜や魚をかたどった箸置き

どうやら「嫌い箸(きらいばし)」は箸置きがあることが前提になっているようです。嫌い箸とは、和食のマナー違反とされている箸の使い方です。
嫌い箸はこちらが詳しいです→嫌い箸一覧 
ちなみに、マナーの基本は箸置きの有無に関わらず、常に箸が同じ場所に来るように置くことだそうで、普段から箸置きを使っていれば、自然と箸を置いたり取ったりしやすい位置に置けるようになるということです。使うことで食事中の箸の置き場所が決まり、箸のマナーが自然と身につくというメリットもありますね。
“箸にはじまり箸に終わる”ということわざもありますし、箸の使い方は大事ですね。また、箸置きは、今は色々なデザインがあり、その日の献立や季節によって選べば食卓を彩り豊かに演出する道具として、毎日の食卓をもっと楽しめそうです。

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