昭和レトロな玩具・家電・雑誌・家具などなどをご紹介

労力を使って出来るようになる喜びがある「独楽」

労力を使って出来るようになる喜びがある「独楽」

輪軸に紐をかけるなどして回転させ遊ぶ伝統的なおもちゃの一つ「コマ」、漢字で「独楽」、ひとりで勝手に回って楽しんでいるように見えるところから作られたらしい(かもしれない)…、当て字になります。
もともと自然玩具の一種で、ほぼ世界中に分布、最古のコマはエジプトから出土した紀元前2000~1400年の木製のものだそうです。
日本で発掘された最も古いコマは7世紀の平安遷都の前にあたる藤原京跡から出土した逆円錐の木製のコマといわれています。

文献上に初めて登場するのは平安時代初期の和漢辞典『倭名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』で、「古末都玖利(こまつむぐり・こまつぐり)」という名で記されています。「つむぐり」の“つむ”は回転する、“くり”は小石を意味する古語で、コマ本来の呼び名は「都玖利(つぐり)」だとか。今でも東北地方で「ずぐり」と呼ばれている所があるそうです。
また、平安時代には、今でいう「鳴り独楽」のように空洞が空いている唐ゴマ・コマ(高麗)が大陸から伝来したといわれ、それが由来になっているようですが、自然玩具としてのコマが古くから日本にあったことは出土品をみてもほぼ明らかで、それに大陸伝来のコマがまじりあい、日本独自のコマを作りあげていったと考えられています。

コマは当初、朝廷の年中行事の余興として楽しまれていましたが、平安時代には貴族階級の大人の遊びとなり、南北朝時代には子どもの遊具となり、庶民の間に広まったのは江戸時代の元禄年間(1688-1704年)以降、人々は、季節を問わず独楽遊びに興じました。そして、手回し、むちでたたいて回すもの、あるいは変形の手車(ヨーヨーに似たもの)、輪鼓(りゅうご、デアボロ/円錐形に軸を通したもの)など様々な種類のものが登場しました。
ちなみに、江戸の町に伝わった「江戸独楽」は赤・黒・黄・緑・紫の“江戸五色”に彩色されることが多く、長寿を授け、身を守るといわれる伝統色なのだとか。

独楽は、昔から縁起のいいものとされてきました。その姿から回すにかけて「お金が回る」、まっすぐ芯が通っていることから「意志を貫く」といった、意味が込められています。
福岡県八女市に伝わる「飾り独楽」は、お祝い事があった時に贈られます。主に京都周辺で広まった、家を建てる際に梁(はり)に埋めて家族の繁栄を願った二つで一組の独楽などあり、独楽にさまざまな思いを託してきました。

歌舞伎役者の佐野川市松が独楽を回している2人の男の子を見ている絵。鳥居清広 画
歌舞伎役者の佐野川市松が独楽を回している2人の男の子を見ている絵。鳥居清広 画(1751-57年)出典:大英博物館
「江戸花木舞渡 ゆびの一曲・大独楽一曲」歌川芳春 画
「江戸花木舞渡 ゆびの一曲・大独楽一曲」歌川芳春 画(1857年)出典:メトロポリタン美術館

そして、元禄年間頃に博多で生まれた「曲(きょく)独楽」と呼ばれる演芸にまで発展し、享保年間(1716-1735年)から幕末にかけて曲独楽は大流行しました。代表的な技は、刀の刃の上で回す「独楽の刃渡り」や、扇子の上で回す「地紙止め」、着物の袖の上で回す「衣紋流し」や、棒の先で回したコマを直角に倒していく「風車」などの技も生み出されました。
主に、「見世物」や「お座敷遊び」などに用いられていましたが、明治時代以降、独楽文化は廃れ、その後は限られた職人たちの手で伝統的技術が現在まで細々と継承されています。

「子供あそび錦絵集 子供遊勇当独楽」歌川広重/歌川芳盛 画
「子供あそび錦絵集 子供遊勇当独楽」歌川広重/歌川芳盛 画(1868年頃)出典:国立国会図書館

当独楽(あてごま)とは互いの独楽をまわし、はじかれて倒れたら負けという勝負の遊びです。説明によると、向かって右側が新政府軍を表しており、幼児は明治天皇を、「サ」の字柄のかすりや萩文様の羽織は、それぞれ薩摩藩と長州藩を、向かって左側で独楽をまわすのが旧幕府軍の庄内藩、会津藩などの諸藩、勝負の成り行きを見つめている中央の子供は徳川慶喜を表していて、子供の遊びになぞらえて幕末の政治状況を批評する風刺画だとか。

コマを用途で大別すると、遊びに使うコマ・曲独楽など曲芸に使われるコマ・鑑賞用の装飾コマに、回し方で分類すると、「ひねりゴマ(指先でひねって回すもの)」「もみゴマ(両手をすり合わせて心棒を回すもの)」「ぶちゴマ(たたきゴマ/芯を持たない逆円錐形のもので鞭のようなもので胴体を叩いて回転させる)」、「糸引きゴマ」「投げゴマ」などあります。

ベーゴマ
ベーゴマ

高度経済成長期(昭和中期)にかけて子どもの遊びに盛んに用いられた独楽の一つ「ベーゴマ」、起源は平安時代に京都の周辺で、バイ(海螺)貝の殻に砂や粘土を詰めてひもで回したのが始まりといわれていいます。

「絵本御伽品鏡(貝独楽、ばいまわし)」長谷川光信 画
「絵本御伽品鏡(貝独楽、ばいまわし)」長谷川光信 画(1739年)出典:国立国会図書館

関西から関東に伝わった際に「バイゴマ(貝独楽)」が訛って「ベーゴマ」となったようで、後に鋳鉄製のものになりました。
ベーゴマは、寛永年間(1624-1644年)頃から長い年月遊ばれ、日露戦争後は様々な種類のものが生産され、昭和30年頃には、野球選手や力士の名前を書いたベーゴマが多く作られ流行しました。この形のコマは永く残り、昭和末まではどこの駄菓子屋にも置いてあり、今治市の生産業者は最盛期には年間200万個も生産したそうです。

やや弛ませた床(遊技台)の上で複数が同時にコマを回し、長く回転するか、または弾き出されずに留まるかを競い合う喧嘩ゴマの一種で、最後まで台の上で回転し続けたベーゴマを回した人が、そのときに競い合ったベーゴマをもらえるというルールもあり、子どもたち同士の賭事のような側面もありました。
このように競技性の高いコマは、子どもに許された数少ないギャンブルとして近年まで盛んであり、週末になるとわずかな金を握りしめて競馬場や競輪場におもむき、公的機関の財政に多大な貢献をなす立派な大人を育成するのに役立った、かもしれません(笑。

ちなみに、小さいベーゴマよりも大きいベーゴマが強く、背丈が高いベーゴマよりも低いベーゴマのほうが強い、とか。
ちょっと難しいベーゴマの紐の掛け方はこちら→ベーゴマ紐のいろいろな巻き方
なお、国内唯一のベーゴマ専門メーカーとして埼玉県川口市の「日三鋳造所」が現在も作っています。

そして、1921年(大正10年)ジャイロ効果(物体が自転運動をすると自転が高速なほど姿勢を乱されにくくなる現象)の原理を応用した「地球ゴマ(地球が23.4度傾いたまま自転しながら公転することを、このコマで説明できることから名づけられた)」が作られ1960年代から1970年代にかけてヒット商品となり、1999年(平成11年)にタカラから現代版ベーゴマともいえる「ベイブレード」が発売され小学生の間で大ブームになりました。

2011年からは、企業やグループが自分たちで作ったコマを対決させる喧嘩ゴマの大会「全日本製造業コマ大戦」などが毎年開かれていて、何気に賑わっているそうです。
第1回全日本製造業コマ大戦で優勝を勝ち取ったのは人工衛星の部品等も手がける由紀精密で、一般向けに直径約10㎜の手回しで3分以上高速回転可能な「Seimitsu Coma(精密コマ)」が販売されています。

独楽

子どものおもちゃを超えた芸術品としてのコマも沢山ありますが、古く懐かしいだけの玩具ではないし、やはり遊んで楽しいもの。手で直接回すもの紐を使うものと、いずれも、回せるようになるには練習が必要で、今はそんな“労力を使ってできるようになる喜び”を忘れているような気がします。
場所をとらない、室内でも回せる(ベーゴマは室外がよいです、下手だとどこへ飛んでいくか…(汗)、安価である、迫力ある対戦が容易におこなえるコマ、コマは“新年”の季語でもあり縁起物、お正月に家族みんなでコマ回しや喧嘩ゴマで遊ぶのも良いかもしれませんね。

出典:こま/コトバンク
出典:独楽/Wikipedia
出典:ベーゴマ
出典:日本語を味わう辞典

テキストのコピーはできません。