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「蜀江文様」や八や八角形とは縁起モノ⁈

「蜀江文様」や八や八角形とは縁起モノ⁈

八角形と四角形を組み合わせた文様を、蜀江(しょっこう)文様といいます。
蜀江とは3世紀頃に中国で栄えた蜀(四川)の首都を流れる河のことで、この地域では古くから多彩な絹織物を産出し、この織物を蜀錦(しょっきん)といい、日本に伝えられて蜀江(紅)錦と呼ばれるようになりました。
特徴は、特に赤の色が美しいことと織り技の精緻さと文様の多様性で、その八角形と四角形の図案の中に唐花や蓮華などの様々な文様を織り込んだものが能装束・茶器の至覆(茶道で使う道具類を入れる袋のこと)・書画の表装など名物裂(めいぶつぎれ)として数多く残されています。

銀地 蜀江文様錦 袋帯
銀地 蜀江文様錦 袋帯

飛鳥時代には伝わっていたようで、日本でもこれをまねて製作した最古の蜀江錦が、法隆寺の宝物として現存しています。
後に、その独特の幾何学的な文様形式をさして「蜀江文様」などといって伝承され、京都西陣などでも織り出されるようになり、能「翁」の装束として使われたことから吉祥文様的な意味も込められ、帯地だけでなく、江戸時代の浮世絵では小袖や夜着にも描かれています。
現在は、古くから使われるポピュラーな図案の一つとなっていて、建築物にも見ることができます。

蜀江文様の組子欄間
三重県伊賀市の「栄楽館」。壁のくりぬきがアーチっぽい形になっている蜀江文様の組子欄間。
蜀江文模様入りケシガラス
宮城県にある書院造の建物「不老仙館」。廊下に大正時代の頃作られた蜀江文模様入りケシガラス。
「江戸名所百人美女、するがだい」歌川国貞 画
「江戸名所百人美女、するがだい」歌川国貞 画(1858年)出典:東京都立図書館

蜀江文様は、八角形が基本です。なので、“八角形”や“八”にまつわる話を少し。

中国では「八」の発音が「発財(財を成す)」の「発」に似ていることから縁起の良い数字とされ、皇帝の住む北京の紫禁城にも、八角形の格子柄が取り入れられました。ちなみに、2008年の北京五輪の開会式は8月8日午後8時8分にスタートした、とか。

キリスト教ではキリストが亡くなられて8日目に復活されたことから「8」は「復活の象徴」として大切にされているのだそうです。旧約聖書の創世記でノアの方舟に乗って洪水を免れた人間の数は8人だったとか。また、聖書のヘブライ語とギリシャ語をカバラ数秘術で数字に置き換えると、イエス・キリストは「888」となります。

日本では古来より2の立方である8はすべての方位(八方=四方に四隅を加えた8方位、北・南・東・西・北東・南東・北西・南西)が広がりを表わす数として、そして、八角形を「八卦(はっけ)」と呼び悪い気を跳ね返し邪気を寄せつけず(八方除け)、すべての方角から幸運を引き寄せる力があると好まれ、そして漢字の「八」は末広がりの形をしていることから縁起の良い聖数とされています。
風水では、八角形が「陰」と「陽」を併せ持ち、バランスが良く安定した形から運気をアップさせる最も縁起の良い形とされています。なお、八角形の内角の和は1080度です。
法隆寺東院にある夢殿は、聖徳太子を供養するために建てられた建立739年(天平11年)頃とされる八角の円堂の形をした建築物です。

法隆寺夢殿
法隆寺夢殿 739年(天平11年)

また、「八」は漠然と数が大きいことを表す語として使われていて、「八島」「八州」は古くからの日本の呼称(雅称)で「多くの島からなる国」の意味をもっています。「八十(やそ)」「百八十(ももやそ)」「八百(やお)」なども数が大きいことを表わす言葉で、現存する最古の歴史書『古事記』に、数多くの神々の存在を総称する「八百万神(やおよろずのかみ)」が記述されています。
つまり、“数えきれないほどたくさんの”という意味合いが込められ、永遠を願うときなど「八」という数字を重宝して使用されていたことが現代にも伝わっているようです。
ちなみに、江戸の町の規模は「大江戸八百八町」と表現されますが、実際の町の数はその倍以上あったとか。

「八」がつく地名は「三」に次いで多く、「八幡」は全国にみられる地名で八幡神社に由来しています。「八幡」とは応神天皇(おうじんてんのう/4世紀後半の古墳時代)の神霊「八幡神」と、それを祀る神社(八幡宮、八幡神社)のこと。なお、全国に約44,000社ある八幡宮の総本社(総本宮)は大分県宇佐市の宇佐神宮で、京都府八幡市の石清水八幡宮と神奈川県鎌倉市の鶴岡八幡宮と合わせて日本三大八幡宮と呼ばれています。

他にも、88歳を祝う「米寿(べいじゅ)」は「米」の漢字が「八十八」と分解できることから、また、田植えから収穫まで88の作業をするから「米」という漢字が成りたったという説。
四国八十八ヶ所は弘法大師(空海)ゆかりの88の霊場寺院の総称で、88は人間の煩悩の数ともいわれます。
立春から88日目の「八十八夜」は、この日に摘んだ茶は上等なものとされ、この日お茶を飲むと長生きすると伝えられています。
オリンピックでは8位までを入賞として賞状が授与されます。などなど、8に関するモノは多いようです。

余談ですが、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で「デロリアン」がタイムトラベルモードに入る速度が時速88マイル。制汗スプレー「8×4(エイトフォー)」は、ドイツでの発売当初の有効成分が欧文の文字数が32だったことから、32を構成するものというアイデアで「8×4」がブランド名になったとか。
まったく蛇足、義妹は車のナンバー「8888」を抽選で当て今も乗っています。お金には困っていないようですが…男運はなかった、と本人談(汗。

蜀江文模様入りケシガラス
蜀江文模様入りケシガラス

このように、八(8)や八角形(蜀江文様を含めて)が持つ安定性・発展・復活などの意味に吉祥の願いを込めて、開運という意味合いを帯びた験担ぎに様々なところに用いてきたのでしょう。
多くの人々を魅力し続けている霊峰富士の形状のように見えなくもない「八」、日本人は漢字の形から得られるイメージを重視する傾向が強いのかもしれないし、今なお息づいていることは見事なまでの“暗合”といえるでしょう。

古来より人は、雷や嵐といった自然の驚異とか動植物の持つ人智の及ばない力に憧れや畏敬の念を感じ、吉祥の願いを込めて様々な模様を生み出してきました。
六角形は自然界に存在する形、八角形は人工的に作られた神仏との親和性が高い形で「八」は仏の教えが八方へ広がり伝わることを表す数字、洋の東西を問わず「8」は大切な数字とされていて、八角形も重要な象徴と考えられていたようです。

スピリチュアルでは、森羅万象を表すとされ最も生気を送りこんでくれる力強いパワーを持つ「八」とされていますが、心身にまといつき心をかきみだす欲望(88の煩悩)を鎮めるために八や八角形にまつわるアイテムを飾ったり身に着けたりしているような気がするのですよね。

六角形のお話はこちら→自然がつくる合理的なパターン「麻の葉文様」の六角形

出典:蜀江錦
出典:8/Wikipedia
出典:組子文様デザイン/蜀江

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