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携帯するようになった鼻紙袋が「財布」!?

携帯するようになった鼻紙袋が「財布」!?

金銭を入れて持ち歩く革や布などで作った袋、がまぐち・札入れ・小銭入れなどと呼ばれる「財布」。
今では電子マネーやおサイフケータイが波及していますが、まだ日常生活になくてはならない財布、そんな財布の成り立ちなど調べてみました。

巾着師(きんちゃくし)・紙入師(かみいれし)
「人倫訓蒙図彙 第四巻・商人部」蒔絵師 源三郎 画(1690年)出典:国立国会図書館。江戸前期・元禄期の風俗や生活を図解した風俗事典。紙入師(かみいれし)と巾着師(きんちゃくし)の仕事の様子がわかります。

財布の元、紙などを畳んで懐中に入れて携帯するようになったのは奈良時代からで、その後ふくさで包む形になり、懐紙入れ・紙挟み(用紙・書類などを挟んでおく文房具)・鼻紙袋へと変化していきます。

日本でお金が使われだしたのが諸外国と貿易を始めた平安中期、銅銭を輸入して使っていましたが、室町時代になると、それだけでは不足し自国内でも硬貨が鋳造されるようになります。この頃の硬貨は、真ん中に穴が空いており、人々はその穴に紐を通して束ねて持ち歩いていました。

なお、世界ではその歴史は紀元前まで遡り、紀元前670年頃のアナトリア半島(現・トルコ付近)を中心に栄えた国家であるリュディアが、世界最古と云われている硬貨(エレクトロン貨)を発行、その硬貨をなめし革て作った袋に入れて使っていたと言われています。

「高川利左衛門 沼沢左門」歌川国貞 画
「高川利左衛門 沼沢左門」歌川国貞 画(1850年)出典:演劇博物館デジタル

長い紺木綿を二つ折りにして左右の両側を縫い留め、開口部の一方を少しあけた(首から下げるための紐が付けられた)財布が見えます。

「曽我祭 俄狂言所作事 中村芝翫」歌川豊国 画
「曽我祭 俄狂言所作事 中村芝翫」歌川豊国 画(1819年)出典:演劇博物館デジタル

梅と三筋格子の模様の衣裳の歌舞伎役者。腰の下げ物は「訓蒙図彙(きんもうずい)」に載っているタヌキを模した煙草入れでしょうか。

江戸時代初期までは穴に紐を通して束ねて持ち歩くスタイルでしたが、治安が安定すると使用も増え、紐で束ねるスタイルは不便なため、いっぺんに出し入れできる巾着(きんちゃく)へと変わっていきました。
巾着は元来、発火用具入れの火打ち袋から発したもので、初期には前巾着といわれて帯の前のところに下げ、小銭入れとして使用されました。専門の巾着師によって、革・羅紗(らしゃ)・高級織物などで華美なものが作られ、他には印章や薬や守り札を入れとしても使われ、後に帯に挟んで腰に下げるようになったようです(腰巾着)。
なお、銭入れとして実用した話が「太平記(南北朝時代1350頃)」に見られるそうで、巾着使用はもう少し早いかもしれません。
ちなみに、倹約や節約を意味する“財布の紐を締める”という言葉はこの巾着を締めることが由来だとか。

その後、江戸中期の1661年に最初の紙幣と言える「藩札(領土内だけで使えるお金)」が福井藩より発行されます。これが広まるにつれ、紙幣を収納できる布製の財布が誕生しました。その財布は奈良時代にできた「懐紙入れ」を元に応用して作られ、紙幣を折りたたまずに収納することができ、今の長財布の起源となっているそうです。
なお、元禄・宝永年間(1700年前後)の書物には既に“財布”の名がみえますが、江戸時代は巾着・鼻紙袋の名称のほうが一般的だったようです。
日本は包むという文化・技術があったので、お金も包むという感覚がしっくり来たのかもしれません。

紙挟み、煙草入れ
19世紀の紙挟み、煙草入れや煙管入れ。出典:ColBase:国立文化財機構
筥迫
江戸時代・19世紀の筥迫(はこせこ)。出典:ColBase:国立文化財機構

「紙挟み」から生まれた“箱の狭いもの”という意味の「筥迫」は、江戸時代中頃から奥女中や武家中流以上の若い女性が懐中にはさんで持つ、金襴、羅紗、ビロードなどの布製の紙入れ一種。鮮やかな色合いの輸入裂を貼り、花鳥や草花模様の刺繍で華やかに装飾した贅を尽くした筥迫は、懐紙や鏡や小銭などを入れる実用的なものでしたが、持ち主の地位を示すアクセサリーでもありました。女性の正装の際に欠かせない装飾品となり、現在では花嫁衣装や七五三の祝い着のときに用いられています。
左写真、江戸時代では武家女性も煙草をたしなみ、美麗な綴織でできた煙草入れや煙管入れを愛用していました。

「美人会中鏡 時世六佳撰(6枚揃)」渓斉英泉 画
「美人会中鏡 時世六佳撰(6枚揃)」渓斉英泉 画(1820年頃)出典:artelino-Japanese

口で紐をくわえているものは、布地で作った紙挟みでしょうか。

「喜瀬川 岩井半四郎(一部)」豊原国周 画
「喜瀬川 岩井半四郎(一部)」豊原国周 画(1879年)出典:演劇博物館デジタル

胸元から筥迫が見えます。わざと見せて携帯するのがルールでした。

江戸時代の印伝革財布
江戸時代の印伝(いんでん/印傳)革財布。出典:画像

印伝とは、鹿などの皮をなめした素材に染色を施し、漆で模様を描いたもの。財布・煙管入れ・袋物などの素材として用いられました。
お財布の素材として最もポピュラーなのは革、皮革の利用は歴史が古く、飛鳥時代には鞣し(なめし)革が行われたと記録されていて、鹿やカモシカ、いのししなどの革を利用してきました。

早道(道中財布)
「早道(道中財布)」深川江戸資料館(19世紀)出典:画像

江戸時代中期も終わり近くに、飛脚の別称からとった早道(はやみち)という革製の財布が登場します。
帯に挟んで用いるもので、上部は筒形の隠し入れ物(小さな高額銭入れ)、下部は留め具のついた蓋のある小銭入れで、男性用でした。

明治時代になると、西洋から“げんこつ”という金具(口金)のがま口財布が持ち込まれ、一般の人々に広まり流行しました。今でも、大きく開くがま口は根強い人気があります。
がま口の詳しい記事はこちら→「がま口」はヨーロッパで舞踏会のお供にしたバッグだった

そして、複数のカード用のポケットつきの二つ折りの財布は、1951年(昭和26年)にクレジットカードが発明されて以後広まり、1970年代にはマジックテープ(面ファスナー)を使用した財布が登場しました。現在は電子マネー等の普及などにより、小型の財布が流行っているようです。

小銭入れ財布

財布とは、財宝を入れる袋というような意味の景気のいい漢語から来た言葉で、日々の努力で必死に呼び寄せたお金の皆様が、一時的に滞在する借家のこと。
しかしこの借家、近年間借り人から住み心地の悪さに対するクレームが続出しており、ほんの腰掛け程度で出て行く人が多いのが悩みです。ブランドものの財布で見た目を飾っても、家主の身持ちの悪さは借家人にはすぐ感づかれてしまうらしい…(笑。
財布の値段と年収に関係がある、とか、お札の向きをそろえるとお金を大事にするようになりお金がたまる、や、風水でこの色がいいとか、まさに迷信の類いでしょう。そんな高額な財布を買って背伸びするより、身の丈に合った生活をしたほうがラクだし、分不相応な出費をしようとは思わないはず、むしろ財布のせいではないですよね。

出典:日本語を味わう辞典
出典:財布
出典:巾着
出典:財布/Wikipedia

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