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日本の「玄関」は秘密がいっぱいだった

日本の「玄関」は秘密がいっぱいだった

普段当たり前のように使っている「玄関」。
玄関で靴を脱ぐ習慣のある日本家屋のほとんどは引き違い戸でなければ、外開きになっています。反対に、家の中でも靴を脱がない欧米では、内開きの住宅がほとんどです。
しかしなぜ日本では玄関で靴を脱ぐのだろう、玄関とは、などのお話です。

玄関とは

玄関というのは仏教用語の一つで、「玄」は奥が深い悟りの境地を意味し「関」は入り口のことで、もとの意味は「玄妙な道に入る關門(関門)」、つまり奥深い仏道への入り口を意味していました。そこから、玄関は禅寺の方丈(住職の居室)への入り口を意味するようになり、寺の門などもさすようになりました。ここでは“入るところ”で“出るところ”の意味はなかったそうです。
この伝統は今でも茶道には生きていて、禅に通じる実践の場として「玄妙の関(げんみょうのせき)」とよばれています。

玄関が初めて“家”に取り入れられたのは、室町時代、足利義政が京都に東山御所を造った際にこの「玄関」を設けたことが始まりといわれています。
義政は禅宗を重んじ御所の中に禅室を設けました。なので「玄関」のそこから一歩中へ入れば悟りの世界に入る大切な関門だということを伝えたかったからと言われています。

なお、平安時代頃までは、建物の出入りは、身分の貴賤に関係なく、屋敷の縁側のようなところから行われていたようです。

それから貴族や武士の屋敷にまで広がり続け、江戸時代になると現在の玄関の原型ができあがりました。
この時代は階級や身分によって、大きさや形もそれぞれ異なっていたそうです。さらには来客等を迎えるための表玄関と家族が出入りするための内玄関、使用人や御用聞きのための勝手口など用途によって出入口を分けていたようです。

日本の玄関

中に入ると土間があり、続いて一段高くなっている式台(板敷きの間)、さらにその奥に畳や板敷きの部屋(取次)がありここからが屋内となります。
従来の日本家屋の玄関から取次までの段差は50cm位あり途中に式台がありました。この高さの理由は、お客様がお見えになったとき家人は正座して迎え入れており双方の目線の高さが同じくらいになるのが良いとされていたからだそうです。

現在はバリアフリー化が進み15~20cmと段差をあまり付けない仕様が一般的となっているそうです。

日本の玄関

江戸時代までの農家や町屋など庶民の家は玄関はありませんでした。
玄関にあたる入り口から中に入ると、隣には土間が設けられ、そこで藁仕事などが行われていました。外と内の区切りである敷居をまたぎ、そこで履物を脱ぎ、板の間から畳の部屋に入りました。

江戸時代が終わり身分制度が廃止されると、武士以外には禁じられていた玄関や門が庶民の家にも登場しはじめ、かまどや流しを置く、台所を兼ねた玄関が見られるようになります。この頃、「玄関=建物の出入り口」という現在の意味が定着したそうです。
ちなみに、江戸時代の末期から入口を“玄関”と呼ぶようになったそうです。
出典:玄関

玄関で靴を脱ぐ理由

ほとんどの家の玄関は、入ってすぐの土足可能なスペース「たたき(土間に当たる)」と、家の中に入る段差部分にあたる「上がり框(あがりがまち/式台に当たる)」があります。これは、日本人は「外」「内」を明確に分ける観念があるため、結界の役割を果たしているとも考えられています。

古来、日本人は大地をケガレと考え、家を神聖なる場と考えていた。聖なる場に入るためには大地のケガレ、外部のさまざまケガレをはらわなくてはならない。日本の住居によく見られる垣根、門、敷居、玄関、上がり框など、多くの装置はケガレの侵入を防ぐための境界、結界を意味している。そして、そのもっとも重要な装置が「沓脱石(くつぬぎいし)」であった。表面が平らな沓脱石は、聖なる場との境界を示す結界であり、沓脱の儀礼を表す石なのである。

『インテリアと日本人』(内田繁 晶文社)

沓脱石(くつぬぎいし)

沓脱石とは、縁側や式台などの前に置き、履物を脱いでそこに置いたり踏み台にしたりする石のことです。
つまり、地面に触れた靴は汚れたものだという意識があり、汚れているからこそ、結界の外に置いてこなければならないのでしょう。

日本人の履物を脱ぐという習慣は、弥生時代から続いているものと考えられています。当初は倉庫として利用されていた高床式の建物は、敷物や畳など床に敷くものができてから、そこに暮らすようになったからとも言われています。座敷の由来はイネモミの倉庫(神社の神殿のモデルといわれる)からと考えられており、神聖な空間であるがゆえに履物を脱ぐ習慣がついたというものです。こうした日本独特の歴史的な背景も靴を脱ぐ習慣に関連していそうです。

そして、日本は高温多湿な気候のため、通気をよくする方が良く、縁の下を作らねば床が湿気てしまうので必然的に外と家の中には段差ができます。そのため、玄関にも段差が設けられ、そこで靴を脱ぐという習慣が定着していったそうです。
また、家の中で靴を脱ぐのは足が蒸れるのを防ぐためとか、床に座り直接布団を敷く日本の文化も、靴を脱ぐ習慣に深くかかわっているのでしょう。
出典:靴を脱ぐ習慣
出典:日本の玄関の歴史

日本家屋の玄関
玄関の向きは南もしくは東が良い、と風水に明るかったじいちゃんが言っていました

最後に

他人の家に上がるときに、玄関で家の中はどんな家になっているのかを想像したり緊張したり、ちょっとワクワクしたりします。玄関には“その家の世界に入る入り口”の役割を果たしているのかもしれません。
そして玄関は“ただ靴を脱ぎ履きする空間”だけではなく、「玄関は家の顔」というように、家の中ではとても重要な空間なのかもしれません。
意味を知ると余計に靴とか脱ぎ散らかしておいてはいけないような雰囲気になりますし、絵や花や写真などを飾る前に、清潔でいつもきれいにしておかなくてはいけない場所だった、と感じました。

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