「フィルムカメラ」は、写すだけで世界が昭和になるかも!
現在、一番身近なカメラといえばスマートフォン。続いてiPadやデジタルカメラが一般的ではないでしょうか。
そして、写真を撮る大きな理由のひとつは、「大切な瞬間を残したいから」ではないでしょうか。
では、カメラがなかった時代、どのように記録をしていたのでしょう。
カメラの歴史
カメラのなかった時代、人は何かを記録するのに、画家が描き“写す”という手法をとっていました。
「ピンホール現象」とは、暗い部屋で壁の小さな穴から光が入って反対側の壁に届くと外の景色が逆さになって見えるという、この現象自体はすでに紀元前には発見されていたようです。
15世紀頃、このピンホール現象を利用した「カメラ・オブスクーラ(小さな暗い部屋という意味/写真鏡)」というものが考案され、これを利用し映し出した像をなぞって描いた“写し絵”はヨーロッパの画家たちの間で流行しました。
さらに16世紀になると、ピンホールの代わりに、より明るい像が得られる凸レンズを使ったものが登場します。これらは、映った景色などをなぞって正確な写生をするためのものでした。
1826年、フランスで感光材料(光を感じて記録できる材料)による撮影が初めて実現しました。このとき感光材料にはアスファルトが使われていて、撮影にはおよそ8時間もかかったそうです。
その後1839年には、感光材料に銀を使った「銀板写真(ダゲレオタイプ)」が誕生、撮影時間は30分程度に短縮されました。ちなみに残っている当時の写真はポートレート(肖像写真)が多く、写真はおもに人物を撮るのに使われていたようです。
1841年、イギリスで撮影した写真を焼き増しができる「ネガポジ法」が開発され、撮影時間は2~3分と大幅に短縮されました。この技術は現在の銀塩写真(フィルム写真)にも用いられています。
日本には江戸時代の1848年に銀板写真が伝わり、幕末には写真館もできたそうです。現存する最古の写真は、1857年に写された島津斉彬の肖像写真と云われています。なお、撮影日といわれる6月1日は現在でも「写真の日」とされ各種写真行事などが行われています。
日本最初のカメラは、1903年(明治36年)に小西本店(現・コニカミノルタ)から「チェリー手提暗函(てさげあんばこ)」というカメラが発売されています。
19世紀後半、それまで感光材料で使われていた、サイズも大きく取り扱いや持ち歩きが不便なガラス板から開発が進みます。1888年になると現在のような“ロールフイルム”が登場し、アメリカのイーストマン・コダック社が「コダック」という名前のカメラを発明しました。セルロイドを用いた100枚撮りフィルムとカメラがセットになった「コダック」は評判となり大衆化に貢献しました。
1912年には格納すればポケットに入る大きさの「ベスト・ポケット・コダック」と名づけらた蛇腹を引き出して撮影する小型カメラを発売、人気を博し各国のカメラに影響を与えました。
1925年、ドイツのオスカー・バルナックが35mm幅のロールフィルムを用いた小型カメラを開発、「ライカ(Leica)A型」としてエルンスト・ライツ社から発表され、1954年には「ライカM3」型が登場、その人気を不動のものにしライカの全盛期を迎えたのでした。ちなみに、現在もっとも多く使われている35mm幅のフィルムはこのとき誕生した規格です。
1935年にイーストマン・コダック社が世界最初のカラーフィルムを発売、1948年にはポラロイド社から初のインスタント写真カメラ、蛇腹式の「ポラロイド」が発売されます。
1950年、世界初のペンタプリズム式(ガラス製の多面体のこと、側面から見た断面が5角形で底面から入射した光を内部で3回反射させることで正立正像にしている)一眼レフカメラが東ドイツのツァイス・イコン社から「コンタックスS」が発売されました。
戦後もドイツが先進国でしたが、1950年代後半からニコン(旧・日本光学)の「ニコンF」を始めとする日本製品の攻勢が始まり、特に先進機能の搭載で使い勝手を向上させた35mm一眼レフカメラで世界市場を席捲します。そして1960年代には日本製カメラは販売数・価格共にドイツを凌ぎました。
ここまでのカメラは電池を必要としない「機械式カメラ」とも呼ばれ、ゼンマイやスプリングなどで構成され機械に頼らず自分でピントを合わせるアナログな機能でしたが、カメラの進化と平行して様々な部分に電子機器が組み込まれるようになっていきました。
1977年にコニカ(現・コニカミノルタ)から世界で初めてオートフォーカスカメラ「コニカ C35 AF」が発売され、以降は「AFカメラ」が主流となっていきました。ただし、電子式カメラが世を席巻しだしても機械式カメラはアンティークな機械式の時計のような存在感があり、愛好家に親しまれ新商品こそ開発されてはいませんが現在でも生き続けています。
なお、クラシックカメラ(アンティークカメラ)とは、おおむね1970年より前に発売したフィルムカメラのことを指すそうです。1960年代以前のカメラは、ほとんどが機械式カメラで、どれもコストをかけて非常に上質な仕上げの特徴があるとか。
ちなみに、富士フイルムが世界初のレンズ付フィルム「写ルンです」を発売したのは1986年。まだカメラが高級品だった時代に、誰でも手軽に使える「写ルンです」は、個性的なCMも話題となって大ヒットしました。
そして、1988年に富士フイルムから世界初のデジタルカメラ「FUJIX DS-1P」が発売され2000年代に入ると徐々に普及します。2008年にiPhoneが日本に上陸し、このころからスマートフォンも徐々に広まっていきました。写真を撮るのは、フィルムカメラからデジタルカメラそしてスマホのカメラへと変化していきました。
思い出の残し方はこれからますます多様化していくことが予想されます。それでも“大切な瞬間をカタチにしたい”というシンプルな思いは、昔から変わらないのかもしれません。
出典:カメラの歴史
出典:アンティークカメラとは
出典:カメラの歴史をみてみよう
フィルム写真の魅力
フィルムカメラの場合、デジタルカメラと違って、撮影後はネガフィルムを写真店でプリントしてもらわなければ何を撮ったかわかりません。そのため、フィルム時代の写真はカタチにするのが当たり前で、プリント写真はアルバムに入れて保管するのが一般的でした。
デジタルカメラの場合、思い出を簡単に記録でき、簡単に画像を見返すこともできますが、手軽に撮影できるようになったことで、画像一枚一枚の重みがなくなったように感じます。それは撮り直しの効かない“フィルム”ならではの意識と姿勢から生まれる感覚ではないでしょうか。コストや時間がかかり、最後まで画像を確認できないフィルムカメラ使用時の方が、一枚一枚大切に撮ろうとする“意識”が働きやすく、シャッター切る瞬間まで十分に被写体を観察し良い作品を創造し撮ろうと心掛けるような感じがします。
また、フィルムカメラで撮影した写真は、どこかノスタルジックな色味や、ハッとするような感性に訴えかける写真が撮れるような気がします。
現在もフィルムの購入ができ、フィルムカメラで撮影した画像の現像や、データ化を行ってくれるので、フィルムカメラを使ったことがない方でも気軽に始められそうですね。
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