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「団扇」は昔、顔を隠したり虫を払う道具だった!

「団扇」は昔、顔を隠したり虫を払う道具だった!

団扇(うちわ)の起源

団扇は紀元前3世紀頃の中国にすでに存在していました。
日本へは、奈良県明日香村の高松塚古墳の壁画に描かれてるように、2~3世紀頃に中国から団扇の原型の翳(さしば)というものが伝えられたと言われています。翳(さしば)とは、羽毛や絹布などを張った団扇形のものに長柄(柄の部分が長い)をつけたもので、権威・儀式・縁起・祈願などの象徴として用いられたそうです。
10世紀頃(平安時代中期)に、小型の翳を団扇と呼ぶようになます。扇ぐことにも使われましたが、主に、公家・役人・僧侶の間で、威厳を正すために顔を隠したり、虫を払う道具として使われました。この頃はまだ、木材を原料としていたようです。

団扇(うちわ)語源・由来
うちわの語源は「打ち(うち)+羽(は)」の「打ち羽」。「打つ」は叩くような動作をすることからと考えられ、「羽」は文字通り「羽」である。「打つ」というのは、蚊やハエなどの虫を追い払うために打っていたことからともいわれるが、実際にそのような目的で用いられ、その用途が一般的であったか、またその目的から「打つ」に繋がったか定かではない。
漢字の「団扇」(宛て字です)は中国語で「うちは(打ち羽)」に対応する字として当てられた。平安中期の辞書『和名抄』には「団扇」を「うちは」、貴人の顔を隠す扇「翳」を「は」、「扇」を「あふぎ」とする記述があり、この頃から円形のものを「うちは」と呼び始めた。中世には「打輪」の表記も見られるほか、「団」の一字でも「うちわ」を意味した。

出典:語源由来辞典

平安時代初期に日本で考案された扇子(せんす/折り畳める扇)が流行し団扇の需要は減少しましたが、室町時代・戦国時代になると、武将が部下を叱咤激励するため皮革や鉄でつくった軍配団扇が用いられるようになり、現在の団扇の原型が生まれたと言われています。なお、後の相撲の行司が土俵上で用いる軍配は、ここからきているとか。
室町時代末には竹と和紙を素材とする“現在のかたち”の原型となった団扇は日本の発明で、それ以来日本独自のものとして発展していき、送風力も飛躍的に上がったそうです。

団扇(うちわ)
ホタルを捕まえる女性と子供(1793年)栄松斎長喜 作 出典:メトロポリタン美術館
団扇(うちわ)
納涼美人図(1800年)歌川豊広 作 出典:メトロポリタン美術館

江戸時代にはいると、庶民へも広く普及し、納涼や炊事など日常生活道具として色々な場面で利用されていきます。そして、それと同時に浮世絵や俳諧、和歌、漢詩などを印刷したものが量産され、道具以外に鑑賞するという新しい使い方が現れ、高名な絵師によって絵が描かれた芸術品も多く生まれています。
一般に利き手ではない左手でゆったりと団扇を使う姿が、裕福な生活をイメージする「左団扇」という言葉が生まれたのもこの時代です。

団扇(うちわ)
露草に鶏と雛の団扇絵(1830–33年頃)葛飾北斎 作 出典:メトロポリタン美術館

明治時代に入ると、商家や寺社の宣伝を扇部に書いて配るなど広告媒体の一つとして使われるようになり団扇の役割が一つプラスされました。また、それまでの美術的な団扇の他に、大量生産した広告団扇もアメリカに輸出しました。

その後、戦時中は一時減産しましたが、昭和30年~40年代には人気アイドルの姿が描かれた団扇、昭和40年代になると伝統的な竹に換わってプラスチックを使った団扇が登場し普及していきます。
そして、昭和40年代以降、扇風機やクーラーの普及に伴い実用的な使用は少なくなりましたが、夏の風物詩としてお祭りなどで好んで使われています。

団扇と扇子(せんす)の違い

平安時代初期に、団扇を携帯に便利なよう改良し折り畳めるように日本で考案されたものが扇子です。
用途として、団扇が日常の生活で、扇子が茶道や舞踊の小道具などフォーマルな場面で使用されるという違いがあります。
英語で、団扇は「paper fan」、扇子はそのまま「SENSU」又は「Japanese fan」となります。

出典:うちわ
出典:団扇
出典:日本文化いろは事典

今でも重宝している団扇

団扇といえば、お祭り・花火大会の各イベントなど夏の風情を楽しむためや涼む道具ですが、自分は今でも実用的に、またインテリアとしても飾って楽しんでいます。
古来、団扇は涼をとるだけでなく、その風で魔を打ち払うともいわれ、縁起物でもありました。
団扇で起こす風は神様の力を呼び起こしたり、強めたりするという意味があるそうで、お祭りなどで見かけるお神輿の周りで団扇を仰いでいるのは、神様の力を呼び起こしてお祭りを盛り上げるためだと言われています。
また、風を起こして厄を吹き飛ばすとも考えられているため厄除けとしてもよいそうで、あまり馴染みのないアイテムですがプレゼントとしても贈答にも最適だそうです。

団扇(うちわ)

目で涼をとる優美な団扇や四季折々の花鳥風月をあしらった団扇など、和のしつらえや、洋のインテリアに、飾るだけで手軽に取り入れることができるのでおすすめです。

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