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ヒトデ、5弁花、星から見える「五角形」

ヒトデ、5弁花、星から見える「五角形」

以前麻の葉文様(麻柄)で六角形の事について書きましたが、ハチの巣・亀の甲羅・雪の結晶などが代表的で、正六角形である理由は、平面を円で埋め尽くすとき、円の配置を維持したまま隙間の総和を最も少なくするために正多角形で近似すると正六角形になることからと考えられています。なので、六角形がいかに合理的で安定的かは理解できます。
しかし、自然界にはヒトデや5弁の花なども潜んでいる訳で、そんな五角形の形が気になり調べてみました。

梅の花、桔梗、朝顔、ヒトデ
梅の花、桔梗、朝顔、ヒトデ

ヒトデ、ウニ、ナマコ(ヒトデを丸めたような体になってる)などの棘皮(きょくひ)動物のからだは、基本的に中心から5方向に放射状(五放射相称)に伸びたつくりをしていて、腕の数が5の倍数になっているそうです。
なぜ棘皮動物に五角形が多いのか、という事について、「ゾウの時間 ネズミの時間-サイズの生物学」本川達雄 著(中公新書)に
「三角形、四角形、五角形、六角形を平面に描き想像していただきたい。この頂点に餌を採る触手があるとする。
この時、上部から流れに乗って餌が来た場合、四角形や六角形は頂点が重なる場合があり、下流に位置する頂点は効率が悪くなる。
働く頂点の効率が良いのが奇数であり、3と5なら3は少なすぎるため五角形が多い」という。
これが五角形になった理由でしょうか。

花も、圧倒的に5弁花が多いようです。
春の花としてはシクラメン・霞草・梅・桜・ツツジ・桃など、夏の花としては朝顔・昼顔・キョウチクトウ・珊瑚樹などが、秋の花としては芙蓉・桔梗・日々草・撫子・リンドウなどがあります。

6個と5個の正六角形
フラーレン、カーボンナノチューブ

花芽(成長点)は平ではなく、先端は丸くドーム状になっています。六角形に並んでいた細胞が、平面から立体的になるとき五角形の助けが必要になります。これが関係しているのではないか、という説を導き出しています。サッカーボールみたいなフラーレンの発展としてのカーボンナノチューブは細長いチューブ状になっていて植物の茎を連想させますね。

また、棘皮動物の仮説を用いると、花弁が各方向から花の中心に誘導するにあたり、全方向に効率的なのは五角形で、花弁にある紫外線による蜜標(ネクターガイド/ハチなどの昆虫へ蜜腺に誘導する目印)を、効率よく全方向に示すには五弁花が良いのではないか、という説もあります。

いずれにしても、「五角形」という形は、それと関わりある餌なり昆虫なりの移動性と大きな関係しているのかもしれません。

晴明神社の五芒星
晴明神社の五芒星

五角形という形を信仰的見地で考え思い出すのは、五芒星(ごぼうせい)、英語ではペンタグラムと呼ばれている星型☆ですが、絵の縦と横の比は1:(√5+1)/2=1:1.618…黄金比となり美しい図形とされます。ちなみに、上下を逆さにしたものは逆五芒星(デビルスター)と呼ばれたりして、悪魔の象徴とすることもあるとか。
では、この☆型はいつから使われたのでしょうか。

遺跡からは、世界的に歴史は古く、紀元前3000年頃の最古と云われているシュメール文明遺跡から五芒星が描かれた壺が発見されています。
日本では、群馬県の縄文時代の遺跡から土器に星型☆の線が刻印されたものが発掘されています。また、ちょっと違うのですが、縄文時代中期頃の遺跡から、ほぼ正五角形に近い5つの柱の穴がある竪穴住居跡も発見されています。
なので、おそらく早くから何かしら(護符とか呪符か?)のシンボルとして使われだしていたようです。

ペンタグラム、ダビデの星、晴明桔梗
ペンタグラム、ダビデの星、晴明桔梗

そして、紀元前5世紀頃、古代ギリシャであの有名な三平方の定理を発見したピタゴラスがピタゴラス派を作り、入会の印としてペンタグラムを使いました。当時のピタゴラス派は輪廻転生を信奉するカルト的な集団だったようです。その関係でペンタグラムは魔術の方面でダビデの星とともに魔除けのマークとして使われるようになりました。

日本では五芒星は晴明桔梗(ききょう)といって、魔除けの印(魔方陣)として平安時代から使われていました。和歌などの古文に「晴明が印」などという表現で記されています。晴明桔梗の5つの角は陰陽道の基本原理である五行(木・火・土・金・水)を表しているとされ、形が桔梗の花に似ていることからこの名で呼ばれています。
晴明というのは、平安時代に活躍した陰陽師(呪術師+占い師+天文学者+暦学者のようなもの)の有力者である阿倍晴明を指しまが、特に呪術師的な才能に優れていたらしく、この晴明桔梗も魔除けの印として発明されたものです。なお、現在も晴明神社の神紋などに見ることができます。

つまり、五角形の全く同じマークが日本とヨーロッパで独自に発明され、しかも両方とも魔除けのマークとして使われていたというのは興味深いことです。

「三光の石、太陽、月、星」渓斉英泉 画
「三光の石、太陽、月、星」渓斉英泉 画(19世紀)出典:メトロポリタン美術館

では、星とのつながりは、というと、日本での文化的考えからすれば上記の画像のように太陽は大きな丸で描かれ、月は三日月形、そして小さな丸は星になっています。家紋などでも星とは丸型で表されていて、なので星は丸型であり星型☆は星ではないと言えそうです。この丸形星はインドに発した北極星を囲んでまわる斗形の北斗七星(柄杓星)の信仰が奈良時代に伝来したようです。

以前『チコちゃんに叱られる!(NHK)』で、古代エジプトのヒエログリフ(エジプトの絵文字)で、海に面した地域であるため身近な存在だったヒトデを、☆に口を示すように中心部に円が描かれている絵文字が使われていて、それがいつしか星の意味を持つようになった、と説明されていましたが、しかしヒエログリフでの星は5本のトゲ(5本線)で表されているので、いずれにせよ五芒星(ペンタグラム)が、いつごろどのように星を表すようになったのか不明なようです。

北炭滝之上水力発電所
北炭滝之上水力発電所。出典:Wikipedia

日本の和柄模様でも三角形、四角形、六角形はありますが五角形というと花の梅花を散らした模様や桜の花を散らした模様など、ましてやシンボルマーク的な家紋は晴明桔梗以外丸形で表されており、星の数ほど模様やマークはありますが、あまり五角形や五芒星に重きを置いてないのかもしれません(軍事方面では五芒星が使用されています)。
ちなみに、51ほどの国旗に五芒星が使われ、さらに六芒星や七芒星も見られます。

星に対する信仰や言い伝えもわずかに残っていますが、星の数が多すぎて見分けるのが面倒くさいためか、あまり熱心には受け継がれておらず、また鑑賞の対象としての星も、月と比べると人気が薄いようです。なお、月は大きな顔をして偉そうにしているので、星の仲間に入れてもらえてない、かも。
星に関心を持つのは、それらの動きを観察してスケジュールを作ってみたり、星と星を結んで図面を描いてみたりという理屈っぽい民族であり、大きな流星や大流星群の予測があると多少盛り上がる程度で、情緒的な日本人には受け入れにくい対象なのかもしれません。なぜか五角形が星の話で終わりました…(汗。

出典:五芒星
出典:宇宙を見て、感じて、楽しもう
出典:花びらの数理
出典:日本語を味わう辞典

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