「がま口」はヨーロッパで舞踏会のお供にしたバッグだった
パカっと開く口金にパチンという歯切れのいい音が、どこか昔懐かしい雰囲気のある、がま口。
名前の由来は、口金がガマ(蝦蟇)ガエルのように大きく開く口からで、カエルは金運を呼ぶとも言われ日本人に好まれ使われてきました。
「使ったお金が帰る(カエル)」という話もあり、特に金運面で縁起が良いとされています。
がま口の原型は、ヨーロッパで貴婦人方が舞踏会のお供にしたバッグでした。
1873年(明治6年)の「東京繁昌記」に、がま口の記述があり、そのころにはすでにあったようです。
最初は“蝦蟇巾着・西洋胴乱(どうらん)”と呼ばれ、肩にかけたり腰に下げたりしていたそうです。
“胴乱”とは、薬や印、銭などを入れて持ち歩くために使われていた簡単な巾着のこと。
初期のがま口は、金属を加工する技術も限られていて、錺屋(かざりや)と呼ばれる金属製のかんざし・帯留め・指輪など金具の細工をする職人が真鍮を加工して1点ずつ作っていたため、とても高価なものだったのだそう。
しかしその後、安価な口金が登場したことで、より庶民の生活に身近なものとなっていきました。
1877年(明治10年)ごろには、がま口は全国に知れ渡り、明治20年頃には大流行します。明治25年ごろには生産技術や材料が改善され、高品質な製品が安定して作られるようになりました。そして大正時代には洋服が広まり、洋装に合う婦人用のがま口カバンが流行します。
昭和に入り戦後になると、ナイロンやビニール素材の生産が進み、がま口財布やカバンにも使われるようになります。その後もワンタッチで開閉でき口が大きく開くがま口は根強い人気を誇り、今に至っています。
ちなみに、がま口を閉める音がパチンと鳴ることから、8月8日は「がま口の日」だそうです。
出典:がまぐち
出典:財布
出典:もっと知りたい、がま口
気に入っているがま口バッグといえば、無骨だけどレトロな雰囲気のファッションアイテムとして日常的に使え、懐古的な響きがある「車掌カバン」。
車掌が日々の業務で頻繁に開閉することを想定して、一枚革にリベット留めを駆使しながら、ひたすら丈夫に作られている、まさしくプロの道具として徹底的に機能性を追求したカバンです。手回り品を収納できる容量も十分、男女問わず日常的に使えておすすめです。
なお、「車掌」の職名は、1900年(明治33年)、列車乗務員として設けられたそうで、車掌カバンはおそらくその後誕生したと思われます。
自分も日常使いの小銭入れから化粧品を入れるポーチ、ちょっと華やかなパーティーバッグまで、いくつかがま口を持っています。
どんな場面にも溶け込めるのも、がま口の魅力ですよね。
そして何といっても、口金を閉じる時のあのパチン!という音。“確かに中に荷物をしまったぞ”と確認する音だったり、“準備よし!このバッグで出発!”と気持ちの区切りをつける音だったりします。
利便性はもちろん、コロンとした可愛らしさがあって、幅広い年代に愛されているのが納得出来ます。
そして、これからは現金を持ち歩かない時代、あってもカードだけなのでコンパクトで出し入れしやすいがま口財布などよいかもしれませんね。
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