「自転車」は人間が発明した最高の乗り物⁈
自転車とは、人力によって車輪を回転させて動く二輪車のことで、チャリンコもしくはチャリと呼ばれることもあります。
買い物や通勤・通学など、ちょっとした移動に欠かせない乗り物で、やはり毎日のように自分も乗っています。
そして、自転車は、こぎ続けなければたおれてしまう…それは自転車操業でした。ではなく自転車についてのお話です。
自転車の発明は玩具から
自転車の始まりは、ヨーロッパの貴族が遊んだという大人の玩具で、前後に2つの車輪をつないで固定し、前輪の上には馬の頭をつけ後輪のうしろに尻尾(しっぽ)をつけ、両輪の中間部にあるサドルにまたがって地面を足で蹴って前進するという“足蹴り自転車”からと云われています。
この足蹴り自転車にはハンドルがなかったので、ただひたすら一直線に走るのみでしたが、これにハンドルをつけて方向を変えられるように改良し、ようやく自転車の原型「ドライジーネ(draisienne)」(足蹴り式二輪車の一般的な呼称)が、1813年にドイツのドライスによって発明されました。
足蹴り自転車は、前輪の向きを変えるハンドルが付いた木製の二輪車で、ペダルもなければブレーキもない単純な構造でしたが、記録によると37kmを2時間30分で走ったといいます。これは時速15km/hに相当し、当時ヨーロッパの主要交通・運輸手段であった馬車よりも速かったとか。
ちなみに、車輪の発明ということであれば、紀元前3500年頃のシュメールで発明されたとされています。円盤状の板材と車軸によって回転可能にした構造は、人類の発明の中でも大なものの一つですが、その頃すでに革製のタイヤとも見られるものを巻いていた形跡すらあるそうです。
その後、英国にも伝わって人気を呼び、1839年にイギリスのマックミランによってペダル式の自転車が最初に考案されます。以後、フランスのミショー、英国のスターリーによって改良され、スピードを追求した前輪の直径が後輪の3倍もある「オーディナリ型(ordinary)」自転車が1870年ころ登場します。
サドルが高くてとても危険でしたが、当時のジェントルマンたちには支持され流行ったようです。なお、それまでの自転車の素材には木や鉄が混在していましたが、全ての部品に鉄やゴムが使われました。
こんにちの自転車の基本型は、1879年に英国のローソンによって考案された「セーフティ型」で、前後輪の間にペダルを置き後輪に付けたギアとチェーンで結ぶ駆動方式、サドルの位置も低く安全性を重視した自転車でした。ちなみに、この自転車は“ビシクレット(Bicyclette=二つの小輪)”と名付けられ、これが英語の“Bicycle”の元となったとか。
続いて、1885年にはスタンレーの甥が、このセーフティ型を改良し、前・後輪の大きさを同じにした「ローバー型」を発売。最終的な改良をしたのは、1888年に世界初となる空気入りタイヤの発明をした英国のダンロップでした。地面からの衝撃をほぼ完璧に吸収するタイヤにより自転車は一気に実用化への道を歩み、馬にとってかわり主流となっていきました。
世界に先駆けて発明していた
ところが、1813年のドライジーネより約80年ほど前の1732年(亨保17年)に、日本で自走式の自転車が発明されたと言う。
彦根藩藩士の平石久平次時光(ひらいし くへいじ ときみつ)が自著『新製陸舟奔車之記』に記した「新製陸舟車(しんせいりくしゅうしゃ)」というもので、これはペダルをこいで進み、方向転換ができるハンドルを備えた人力で走る舟型の三輪車でした。実際に作成、走行に成功していて、一説には一時(おそらく当時の“いっとき”は2時間位)七里(約27km)、時速14キロのスピードが出たという記録もあるそうです。
これに先立つ1729年以前に、武州児玉郡(現・埼玉県本庄市)の農民が製作した徳川吉宗にも献上され江戸の街で評判となっていた「陸船車(千里車)」という足踏み式の自走四輪車に触発されて研究したようです。ただ、久平次式の様にハンドル操作による方向転換はできず、踏車(足踏み水車)と歯車の原理を応用したシンプルなものでした。
今まで残っているのはわずかな記録で近年まで久平次の功績は歴史に埋もれていたのですが、2003年の産業考古学会総会で梶原利夫氏が「1728~1732年のわが国における自転車の発明」と題し報告され、新製陸舟車は史料研究において“世界で初めて発明された自転車相当の乗り物”と確認されたようです。
日本へは江戸時代末期にミショー型自転車がもち込まれたとされ、明治時代初期に伝えられたオーディナリ型は“ダルマ車”と呼ばれました。
明治に入ると、日本でも自転車製作が行われるようになります。
1868年(明治元年)、万年時計やカラクリ人形からアームストロング砲まで、様々な発明・設計・製作で知られる“からくりや儀右衛門”こと田中久重(東芝創業者)が自転車を製造したとの記述が残っています。また、1870年(明治3年)に竹内寅次郎という彫刻職人が東京府に「自転車(“自転車”という言葉の最古の使用例)」と名付けた三輪の車の製造及び販売の許可を出願とあり、1876年(明治9年)には、福島県に住む鈴木三元が「三元車」という前二輪の三輪自転車(1881年/明治14年、第2回内国勧業博覧会に出品)を開発し製造したとあります。
国産第1号の自転車は、1890年(明治23年)に宮田製銃所(現・モリタ宮田工業)が製作したセーフティ型で、1893年(明治26年)には、空気入りタイヤ自転車の量産(年間生産能力500台)が始まりました。初期の国産自転車の製造には、車大工や鉄砲鍛冶の技術が活かされていたそうです。宮田製銃所の宮田英助も元はこの鉄砲鍛冶職人でした。
次第に業務用・通勤用として国民生活必須の交通手段となり、現在は日本の自転車普及率は世界的に見ても高いようです。
ちなみに、世界初の電動アシスト自転車は、1993年(平成5年)にヤマハが発売し、その後世界的に普及していきました。
自転車の魅力
空気を汚さない…地球温暖化や酸性雨の原因にもなっている二酸化炭素を排出しないので、空気を汚さず地球にやさしい乗り物です。
手軽に乗れて場所をとらない…近くへ行くなら、やぱり自転車です。クルマの渋滞や事故を減らすことにもなります。
エネルギー効率が最高…移動距離当たりのエネルギー消費量を自動車やその他の乗り物と比べたらもちろん、徒歩と比べてすら1/5~1/6のエネルギーで済む超エコ性能。しかも単位時間当たりのエネルギー消費量で比べると徒歩と同じかそれ以上です。
健康になる、肥満予防にもなる…自転車に少し長く乗ることで、身体の余分な脂肪を落とす、有酸素運動になります。また、心臓や肺が少しずつ強くなり、健康にとても良いです。
しかも、身体の重みが足に直接かからず、ヒザへの負担が少ないので、体重が重い人や基礎体力がない人、運動が苦手な人にとっては、ウォーキングやジョギングよりも断然安心といえます。下半身ばかりでなく、腕や背中、お腹のトレーニングにもなるので、全身がキリッと引き締まるという嬉しい効果も期待できます。
ただし、“ややきついかな”と思うくらいの速さで20分以上の走行でないと効果は期待できないのだとか。
※電動アシスト自転車は含まず
最後に
現在、このような状況なので自電車の需要は増えているという。
ちなみに、自転車部品で世界シェア70~80%を誇る大阪に本社があるシマノも、パンデミックが始まって以来、時価総額が日産やJR西日本を上回るまで増加していて、自転車業界にとっては追い風のようです。
この機会に購入した人は、運動になる上に、公共交通機関をほとんど使わずに済む、身近な場所を自転車で散策するようになり電車では辿り着けないような新しい場所を街中で発見することができた、など最も有益な買い物だったという人が多いそうです。
ほとんどの人にとって自転車は運動ではなく主に移動のための手段です。でも、買い物するなら遠くのスーパーへ、とか、遠くの公園へ散策、とかに、ラクで気持ちいいスピードで走っていると、いろいろな発見ができて心もリフレッシュできますし適度な運動にもなって、もしかしたら自転車は最高な乗り物なのかもしれませんね。
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