チーズを和風に変えちゃったあの「おつまみ」、ある病気によいかも
チーズを鱈のすり身シートで挟んだ細長い珍味といえば「チーズ鱈」のことですが、“「チータラ」のことでしょ”と思った方もいるのでは。かく言う自分も「チーズ鱈」を略して言った愛称が「チータラ」と認識していました、が違ったようです(汗。そんな家飲みにピッタリな「チーズ鱈」についてのお話です。
現在では、おつまみの一分類として確立されている普通名詞のような固有の商品名になった「チーズ鱈」ですが、これは、おつまみや珍味で知られる食品メーカー「なとり」が開発し1982年(昭和57年)に発売した和洋折衷なおつまみです。
既に40年近く愛され続けている商品で、日本食糧新聞社が主催する食品品評会の2014年度ロングセラー賞にも選ばれています。ちなみに、この年の他の商品は、赤缶カレー粉(エスビー食品)・ベビースターラーメン(おやつカンパニー)・ゆかり(三島食品)・雪見だいふく(ロッテアイス)・カラムーチョ(湖池屋)でした。
「なとり」は戦後間もない1948年(昭和23年)前身にあたる名取商会を発足し、最初の製品「いかあられ」を発売、2年後には「鱈そぼろ」、1955年(昭和30年)には甘く味付けしたのしイカ「東京焼きイカ」を全国で発売し新鮮味のある珍味として大ヒットしました。その後、高度経済成長を経て洋食が広まっていった60年代、和洋折衷おつまみの開発に着手し、一口サイズのチーズをキャンディ包装した「一口チーズ」を開発し販売しましたが、当時はまだ冷凍保管や輸送手段が整っておらず、また冷蔵庫が普及していなかったため、うまくいきませんでした。
今度は、冷蔵ではなくチーズを常温保存できる仕組みを化学メーカーと共同開発し、得意のイカを組み合わせた「チーズいか」を開発しますが、イカが時間の経過とともに赤く変色してしまうという問題が発生、解決策は見つからず断念します。別の材料として、鱈をシート状にした製品を作っていたこともあり、イカから鱈へと変更したとか。
おつまみの王道はイカ、鱈では難しいと思われたようですが、試作品を口にした人々の評価がとても良く(食べておいしかったことに加え、チーズを鱈シートで挟んでいるため、つまんでも手が汚れにくいという利点があり)スーパーや小売店の即採用が相次いだそうです。そして、「チーズ鱈」として商品化され、キャッチコピーは「北海の鱈が北欧の味を上品に包みます」、上記年に300円で発売されました。(写真は発売当時の「チーズ鱈」)
その売れ行きは予想をはるかに超え、三菱総合研究所から発表された1982年の「成長消費財トップ20」では、新製品部門で1位を獲得したそうです。
人気を集めたひとつに使用するチーズにありました。使われているのはナチュラルチーズを加熱溶解したくせの少ない自然な味わいのプロセスチーズ。当時は、くせがあって独特の風味のナチュラルチーズは日本人には合わなかったとか。現在は、80年代半ばからの嗜好の変化によりその風味が今は好ましいものとして受け入れられていて、使うチーズにこだわった各種「チーズ鱈」を販売しています。2006年(平成18年)に発売された「一度は食べていただきたい 熟成チーズ鱈」は食品評価の権威である「モンドセレクション」で金賞を受賞するほど。
もうひとつは、1983年より様々な味のバリエーション商品を登場させ、消費者を飽きさせなかったことだという。サラミ入り・ピザ味・からし入り・わさび入りなどを次々に発売し、多様化するおつまみニーズに応えていきました。現在は、裏ごしした枝豆を使用した常温タイプの「チーズ鱈 えだ豆(55g300円)」と冷蔵タイプの「まろやかチータラ えだ豆(30g120円)」が9月末までの期間限定で販売されているようです。
出典:株式会社なとり
ちなみに、「チーズ鱈」と「チータラ」はどちらも「なとり」の商品で登録商標です。違いは、チーズ鱈は“鱈のすり身”を、チータラは“魚肉すり身”を使用し量はチータラの方がお得です。おそらく、チーズ鱈は20~50代の自宅で晩酌するおつまみ的なもので、チータラはおやつ的な感じなのでしょう。
余談ですが、認知機能や精神状態の関係を調査したコホート研究(研究対象とする病気にかかっていない人を大勢集め、将来にわたって長期間観察し追跡を続けること)からわかってきたことで、魚を多く食べる人(血液中に魚に多く含まれる脂肪酸のDHAやEPAの濃度が高い人)ほど認知機能低下と抑うつ状態のリスクが低くなるそうです。つまりボケとうつになりにくくなるとか。また、牛乳・バター・チーズ・ヨーグルトなどの乳製品をたくさん摂っている人ほど認知機能は維持されていて、総じて脂肪の摂取が多い高齢者ほど認知機能はよい傾向にあるという結果がみえてきたそうです。
2008年にメタボ検診が始まってから、“太ったらダメ”とか“脂肪は悪者”という意識が強くなってきてしまいましたが、痩せ過ぎ痩せ気味には注意した方がよいとのこと。(ちなみに、自分ヤバいかも、ちょっと気になり体重を計ったら47kg、身長162cmだから…)
出典:科学研究から見る、食と脳・こころ
ということで、「チーズ鱈」は酒のつまみに又おやつに、打って付けな食べ物ではないか、と思ったりしたのですよね。
自宅で晩酌する“家飲み”が増えている現在、スルメっぽい食感で色々な酒に合いアテになる「チーズ鱈」、上記理由プラス低カロリーかつ食べ応えもあるのでおすすめです。
チーズも鱈も応用範囲の広い食材だから、工夫次第でさまざまな料理にアレンジでき、ユニークなレシピが「なとりの簡単アレンジレシピ」から公開されています。
もっと歴史の長いおつまみは他にありますが、時代を先読みしたチーズへのこだわりで、「チーズ鱈」がこれだけロングセラーなのも納得です。「チーズ鱈」はこれからも、イノベーションで熟成を重ねていくことでしょう。
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