静かな掃除道具として「和箒(ほうき)」が人気
昔はどこの家にも1つや2つはあった和箒。
かつて日本の家屋は畳が中心で、室内の掃除道具といえばハタキ、箒、雑巾がけが定番でしたが、昭和30年代の後半から洋間が増え電気掃除機の普及によって和箒は室内掃除のメインの道具の位置を追われるようになりました。
ところが近年、電気を使わず、ちょっとしたときに気軽に使える和箒が見直されています。
ということで、昔おばあちゃんの家にあった長柄の「江戸箒(えどぼうき)」のお話です。
室内用「和箒」の特徴
座敷箒の材料は、関東から北の地域ではホウキモロコシと呼ばれるイネ科の植物を用いられ、関西では、九州地方南部で自生していた熱帯植物の棕櫚(シュロ)を用いたのが主流であったといいます。そのため、ホウキモロコシを用いた座敷箒は「江戸箒(えどぼうき)」と呼ばれています。
この「江戸箒」は、1830年(天保元年)創業の白木屋中村傳兵衛商店が江戸後期に最初に作り始めたそう。
棕櫚のほうが柔らか目、ホウキモロコシのほうか硬めで弾性があります。
なお、現在では、ホウキモロコシも棕櫚もほとんど国産品は用いられることはなくなったようです。
そのため、国産の材料を使い職人の手によって作られた本格的な「和箒」は高価なものになっています。
穂の部分は日本の座敷箒の伝統的技法「編み上げ」と呼ばれる緻密な方法でつくられています。
編み上げる形は、さまざまの形、編みあげる糸の配置、使う糸などは産地によって異り、編みの構造にはそれぞれ独自の工夫がなされているようです。
畳を掃除するときは、畳の目に沿って掃くと畳の目に詰まった埃を掻きだしながら掃除ができます。
箒の命はもちろん先端部なので、使い終わった時は吊るしておかなければなりません。
ちなみに、これを逆さにして置くのは、長居のお客がきたときに早く帰ってくれるための“おまじない”だそう。
「和箒」の良いところ
◆床の塵がふと目にとまっても、いま掃除機を出してくるのは少々おっくうに思いますよね。そんな時、箒が1本、いつも部屋に掛かっていれば、ずいぶんと便利です。
◆手の届きにくい高い所や、階段を上り下りしながらの掃除、掃除機が届かない隅のホコリ取りにも重宝します。
◆当りが柔らかいのにコシが強く、力をいれずに掃き出しができるので、手首に負担がかからず、使って疲れることもないすぐれものです。
◆掃除機は強力に塵や埃を吸い取りますが音が気になって、夜は使えないことも多いですが、箒ならほとんど音がしませんし電気も使わないから経済的です。
◆畳やフローリングを草のほうきで掃くとツヤを出してくれる効果があります。掃除機を使いすぎるのは畳の荒れを早めるそう。
◆メンテナンスをしっかりしておけば、5年や10年持ちますので買い替えることも少なく、長持ちするところも魅力。
江戸箒は、まず座敷箒として、少し使い減りしたら洗面所やトイレ用として、さらに使い減りすれば玄関用として、だんだん下におろしていきながら使える良さもあります。
そして、植物原料ですから処分に困ることもありません。
出典:江戸箒(江戸ほうき)老舗/白木屋傳兵衛
最後に
必要なときにサッと取り出せて、使い終わったらスッと収納できる「和箒」。
1本あると気分によって使い分けられ、汚れたらすぐに掃除する習慣も身につきますね。
また、天然素材がやさしい雰囲気を醸し出す美しい「和箒」のある部屋の風景、インテリアとしても見栄えしそうです。
結局、環境に一番やさしい掃除方法なのかもしれませんね。
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