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やはり優れていた!エコの「和ろうそく」

やはり優れていた!エコの「和ろうそく」

仏壇にお線香をあげる際は日常ですが、“特別な日にだけ使うもの”という印象の「ろうそく」。近くのコンビニやスーパーで買える誰もが一度は見て触れたことのある真っ白で細長い姿・形の「ろうそく」、こちらは西洋ローソクで、では「和ろうそく」とはどのようなものか、気になり探ってみました。

日本のローソクの歴史

紀元前1550年頃、古代エジプトの遺跡からローソクの燭台(ローソクを立てるのに使う台で多くは持ち運びできる)が出土しているので、この頃が起源ではないかと言われています。

ローソクは、世界各地でそれぞれ独自に発達しましたが、日本へは538年(飛鳥時代)に仏教が伝来し、この時にローソクも伝えられたのではないかといわれています。
747年(天平19年)の「大安寺伽藍縁起並流記資財帳」に“蝋燭”の名でローソクの記載があり、この記録が文字使った最古のものとされています。当時のローソクは中国から輸入された蜜蝋(みつろう/ミツバチが巣を作る材料として働き蜂の腹部から分泌するロウのこと)と考えられています。
平安時代894年に遣唐使が中止されるとローソクの輸入も途絶えました。そのため、松脂(松やに)を使った国内での製造が始まったと考えられています。
室町時代1375年頃、木蝋(もくろう)の和ろうそくが誕生します。原料はウルシ科のハゼノキやウルシの果実の脂でした。この頃、普及しはじめましたが、まだまだ贅沢品でした。

和ろうそく
南部鉄器の燭台と和ろうそく

ちなみに、この頃までは「蝋燭」を“らっそく”と呼んでました。“ろうそく”になったのは江戸期以降だとか。

江戸時代に入ると木蝋の原料であるハゼノキが琉球から伝わり、商工業の発展で灯りの需要が高まったことで和ろうそくの生産量が大幅に増加しました。
明治時代はさらに和ろうそくの需要は拡大していきますが大量生産に限界があり、1870年(明治3年)に岩崎弥太郎が西洋ローソク(石油やオイルシェル由来のパラフィンワックス)の輸入を始めます。1873年(明治6年)には西洋ローソクを国内で量産するようになり、比較的安価なローソクが全国的に広く普及していきました。
和ろうそくは手工業的に製造され色も黄褐色で光度も若干暗く、一方、西洋ローソクは機械的に多量製造され色も乳白色で光度も明るいため、徐々に和ろうそくから西洋ローソクにシフトし、和ろうそくは衰退していきました。

西洋ローソクの安定生産を可能にしたのは、1890年(明治23年)頃にスタンダード石油(エクソンモービルの前身)、1900年(明治33年)にはライジングサン(シェル石油の前身)が日本へ石油の輸出を始めたことに関係しています。

しかし、その後はガス灯や石油ランプ・電灯・照明が普及し、明かりとしてのローソクは減っていきました。
現在ではローソクは伝統的な宗教儀式や、各種イベントの演出、災害時の明かりの確保、リラックス空間を演出するものへと用途が変化しています。

出典:全日本ローソク工業会
出典:ろうそく

「和ろうそく」について

「和ろうそく」は、イグサと和紙からなる芯にウルシ科ハゼノキの果実からとれる木蝋を塗り重ねて作られていて、純粋に植物性になります。煤が出にくく炎が大きめで消えづらいので、屋外での使用にも向いています。

和ろうそく

かつては蜜蝋を使っていたものが、木蝋へ替わっていきます。これは殺生を嫌う仏教で“生き物から作ったろうそくはそぐわない”と考えられたからだそうです。普通の家庭などではほとんどは洋ローソクですが、石油パラフィンワックスを用いているので宗教上の問題はありません。
しかし、日本の神社仏閣は「和ろうそく」を使います。
なぜかというと、石油パラフィンの洋ローソクは安価ですが、その煙の中にカーボン(天然ガスや石油などの不完全燃焼より得られる炭素の微粉)が多く含まれています。かたや「和ろうそく」は作るのに手間ひまがかかり高価ですが、植物から作る木蝋なのでカーボンがほとんどなく、いわゆる煤(すす)なので掃除は簡単で煤払いをすれば良いそうで、また煤が付くことで建物を丈夫にする効果もあるとされています。
ある若い僧侶がそういうことを知らないで、安い洋ローソクを使ったばかりに、寺の内部にカーボンが付着し、これを除去したりするのに大変な費用が必要だったという話があるそうです。

和ろうそく
手描き絵ろうそく

そして、「和ろうそく」は、燃え尽きるまで蝋が垂れず綺麗に燃え尽きます。(普通のローソクは時間が経つにつれ蝋が垂れてローソクそのものの形も崩れていきます)
それはまさに、手作りならではの作り方で、内側の蝋の周りに、外側に違う蝋を塗り、そして内側の蝋のほうがやや早く溶けていくようにしてあるのだそうです。その時間差で、外側の蝋は、内側に倒れこむようになり、そのために溶けた内側の蝋が垂れないのだそうです。
綺麗に均一に燃えていくので、その長さや太さで燃え尽きるまでの時間を調整でき、寺や神社からの要請で、法事用だとか種々の時間に対応できるのだとか。

最後に

日本の文化を陰で支える伝統産業の一つですが、「和ろうそく」なくしては神社仏閣の建物が長く保てないということですから、先人の知恵とは偉大なものですね。
しかし、洋ローソクほどの需要はなく、また需要は伸びるどころではないそうで後継者不足もあり、風口の蝋燭(風前の灯)です。灯火を消さないでほしいものです。

そして、古くから手仕事によって作られる日本の「和ろうそく」、蛍光灯などの直接照明を消して食卓などのいつもの空間に「和ろうそく」を一つ灯すと“1/fのゆらぎ”でゆったりとした温かで豊かな時間が流れてきそうです。
最近は、リーズナブルな価格のものもあり、供養や日常使いに取り入れてみると、いつもと違った雰囲気を楽しむことが出来るのでおすすめです。防災グッズとしてもおすすめ。

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