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人間への罰としてやってきた昭和の「怪獣」

人間への罰としてやってきた昭和の「怪獣」

以前たまにニックネームで言われた、人間の女の姿をしながら髪は何百匹というヘビの“ゴルゴン”(髪がソバージュで狂暴だったから?(汗。)、自分の星座であるギリシア神話のケンタウロスは上半身が人間で下半身が馬、世界中に広く流布されている“龍(ドラゴン)”など、ギリシア神話やローマ神話・聖書・伝説でつくられたモンスターも怪獣といえなくないし、日本の妖怪と言われている、頭はサル・胴体はタヌキ・尾はヘビ・手足はトラという“鵺(ぬえ)”や、鉄だけを食べる猪のような姿の“わざはひ(禍・災い)”、“河童(かっぱ)”などの類いも怪獣といえそうです。

SFやファンタジーものが好きな自分も再放送などで見た怪獣映画に夢中になったクチで、怪獣ソフビも持っていたのに捨てなければよかったと思いつつ、怪獣とは何だろうと探ってみることにしました。

怪獣のソフビ
怪獣のソフビ。出典:Flickr

ちなみにソフビとは、ソフトビニールの日本式略語。主に、マンガやアニメの登場人物、怪獣などをかたどったポリ塩化ビニル製の人形のことを言います。子どものころマンガや怪獣物の映画などに毒された人々が、社会生活によるリハビリのかいなく中毒症状が抜けきらず、大人になっても昔のヒーローの人形を買い集めようとするため、当時二束三文で売られていたソフビが信じられないような高値で取り引きされることになっています。ソフビがコレクター間で売買される場合、当時のパッケージや説明書などが付いているかいなか、破損やキズがなく販売当時の美しさを保っているかどうかなどが厳しく審査され、高価(なのか⁈)茶道具をパロディ化したような取り引きがなされるのが不思議…かな。

1933年映画「キング・コング」
1933年(昭和8年)3月にアメリカ製特撮怪物映画「キング・コング」が公開(日本では同年9月に公開)。出典:Flickr
1954年映画「ゴジラ」ポスター
1954年(昭和29年)に公開された映画「ゴジラ」ポスター。これが最初の「怪獣」の使用例とされます。出典:東宝株式会社

「怪獣」は、学術的な言葉ではなく、正体不明の不思議な生物・獣(の総称)と語釈され、およそ4つに分けられるようです。
(1)恐竜を中心とする太古の動物…中生代に栄えた爬虫類の恐竜は、巨大な形状とその実存が人を不思議がらせたため、怪獣とよばれるように。
(2)空想上の動物…神話や伝説でつくられた生物。一部現実の動物をよりどころにしているものもあり様々に空想脚色が付加されたと考えられます。
(3)実在するといわれる謎の動物…ヒマラヤの雪男(イェティ)・ビッグフットなどの謎の動物、UMA(ユーマ=未確認動物)ともよばれています。
(4)SFや映画に登場する動物…児童向けの娯楽物で、とくに映画の中で作られた空想の怪獣。ゴジラ、モスラ、ウルトラシリーズに登場する怪獣など。

やはり「怪獣」と聞いてゴジラを思い浮かべますが、「ゴジラ」は円谷英二(つぶらやえいじ)の特殊効果撮影を使った日本初の怪獣映画で、1954年(昭和29年)に公開され大ヒットしました。ゴジラ自体は1933年(昭和8年)のアメリカ映画「キングコング」に影響を受けていますが、キングコングはゴリラをただ大きくしたような存在で、ゴジラはそれをさらに巨大化させ、口から火(放射能)を吐くなどより人類の脅威として発展させました。
日本で「怪獣」という存在を普及させたのは東宝の怪獣映画によるところが大きく、そしてゴジラ以降は次々と怪獣映画が作られますが、それらの怪獣は全て巨大だったので「怪獣」という言葉が変化し、巨大な生物を指す場合が多くなったようです。

なお、「怪獣」の語は、紀元前4世紀~3世紀頃にかけて徐々に付加執筆されて成立した古代中国の地理書『山海経』に初めて現れ、日本では江戸中期の1794年(寛政6年)に書かれた文献『玩鴎(がんおう)先生詠物雑体百首』に熟語「怪獣」が初出だとされます。

1966年「ウルトラQ」テレビのオープニング場面
1966年「ウルトラQ」テレビのオープニング場面。出典:Flickr
「ウルトラマン」1966年
「ウルトラマン」1966年の放送で最高視聴率42.8%を記録。出典:Flickr

以後、円谷プロは1966年(昭和41年)に「ウルトラQ」や「ウルトラマン」をはじめとするウルトラシリーズなどで、人間が縫いぐるみに入って演技する怪獣、ガラモン、ゴモラ、ゴルゴスなど数多くの怪獣をつくりあげ、子どもたちの人気モノにしました。また「ゴジラ」と人気を二分する巨大蛾(が)の怪獣「モスラ(1961年)」や、カメをモデルにつくられた怪獣「ガメラ(1965年)」のシリーズなどが相次いで製作され、怪獣映画の黄金時代が築かれました。

1970年代後半以降、怪獣映画は衰退しましたが、1984年(昭和59年)にゴジラ生誕30周年を記念した「ゴジラ」が製作されたのをきっかけに復活の兆しがみえはじめ、1990年代以降は「ゴジラ」「モスラ」「ガメラ」をはじめとする怪獣の映画がコンスタントにつくられ、海外では、コンピュータ・グラフィクスを駆使したスティーブン・スピルバーグの恐竜映画『ジュラシック・パーク(1993年)』や、「ゴジラ」をリメイクしたSFXモンスター・ムービー『GODZILLA(1998年)』がハリウッドで製作され話題をよびました。
そして、2004年(平成16年)ゴジラが映画スターとしてハリウッドから高い評価を得て、日本生まれのキャラクター・怪獣キャラクターとして唯一、殿堂入りを果たしました。

1964年「モスラ対ゴジラ」映画
1964年(昭和39年)「モスラ対ゴジラ」映画。出典:Flickr
1971年「ゴジラ対ヘドラ」映画
1971年(昭和46年)「ゴジラ対ヘドラ」映画。出典:Flickr
1964年「三大怪獣・地球最大の決戦」
1964年(昭和39年)に公開、ゴジラが初めて善玉として描かれた「三大怪獣・地球最大の決戦」。出典:Wikipedia

ということで怪獣(kaiju)とは、怪しげな動物という意味で、日本式モンスターのことをいう。特撮映画の創世記に登場した西洋のモンスターが、動作の鈍さを映画の撮影技術でおぎなっているようなぎこちなさと、恐竜や大型の猛獣といったワンパターンな顔ぶれを特徴としていたのに対して、日本の怪獣は人間が中に入って動かしているような動きのスムーズさと、毎週正義のヒーローに倒されるために次々と個性豊かな新顔が登場するという種の多様さを売り物にして、一時期の特撮物の黄金期を作り上げました。
日本映画に登場したゴジラを初めとする初期の怪獣は、まるでビルや鉄道などをひとつひとつ手作りしたミニチュアのような有名な街を片っ端から破壊していましたが、後期の怪獣映画やテレビの特撮番組では、貧乏な制作者に遠慮して野っぱらや宇宙など環境整備に手間がかからずリサイクルが可能な舞台で、正義の味方と一緒にのびのびと暴れていた…といわれています(汗。

でも当時の怪獣は、フィクションである怪獣映画に登場する空想の生物とはいえ、ゴジラは核や戦争の象徴で、「ゴジラ対ヘドラ」のヘドラは高度経済成長の副産物である公害の化身、モスラはフェミニズムや先住民問題がテーマ、「マタンゴ(1963年)」は欲に目が眩んだ高度経済成長期にある日本人の成れの果てのキノコ怪物など、怪獣が何かのメタファーとして描写されていて、人間の「罪」の象徴で人間への「罰」としてやって来る作品が多かったような気がします。
現代はどうなのだろう、怪獣のプロレスごっこを観て楽しむ時代なのでしょうか。

出典:怪獣/Wikipedia
出典:怪獣
出典:ソフトビニール
出典:日本語を味わう辞典

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