日本の「老舗」は世界一多い!
剣道の先生へのお歳暮は、なぜか必ず「とらや」の羊羹と決まっています。
「とらや」は、室町時代後期に京都で創業、そして東京の地に進出してから150年、御所御用を務めてきたことでも知られる老舗の和菓子屋。
羊羹が好きなのか、“とらや”さんが気に入っているのか…。
それはさておき老舗、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年に創業100周年を迎える企業は1,458社、プラスすると企業数合計3万5,018社になるそうです。
日本は世界で類を見ないくらい老舗企業が多く、ダントツだという。
そもそも「老舗」とは、基準は?
広辞苑によると、「先祖代々の業を守りつぐこと。先祖代々から続いて繁盛している店。また、それによって得た顧客の信用・愛顧。」とあります。
「しにせ」と読むのは特殊な読み方で、「老」は長い経験を積んだことを示し、「舗」は店を示すことから、長い経験を積んだ店のことを指す当て字として使われるようになったという。なお、漢字本来の読み方では「ろうほ」と読みます。
「老舗企業」と名乗るための明確な基準はないそうです。ただ、企業調査に関わる会社は下記のような基準を設けているそうです。
・帝国データバンク:創業100年以上を「長寿企業」と呼んでいる。
・東京商工リサーチ:創業30年以上を「老舗」と定義 している。
・日本老舗サイト:創業から100年以上が経過、または3代以上にわたって経営している店。
・東都のれん会:「100年、3代にわたって同業で継続し、現在も盛業」な都内企業、店舗。
調査統計上何年以上のものと区切りをつけているだけなのですね。
日本は老舗企業数、世界一
東京商工リサーチの調べでは、創業1,000年以上の企業が7社、500年が32社、200年は3,146社もあるそうです。200年では世界中の企業数5,586社のうち半数以上が日本企業で占めていることになります。そして、世界で100年以上の歴史を持つ企業のおよそ80%が日本にあるそうです。
日本で一番歴史のある会社で世界最古の企業、「金剛組」は神社仏閣建築の設計・施工、城郭や文化財建造物の復元や修理等を手がける会社で、飛鳥時代にあたる578年創業、実に1,440年存続している超老舗企業です。
老舗企業数、存続年数に改めて驚かされます。金剛組に続く長寿の老舗企業ベスト10は下記になります。
企業名 | 創業年 | |
---|---|---|
1位 | 金剛組(木造建築工事業/大阪府) | 578 |
2位 | 一般社団法人池坊華道会(生花・茶道教授業/京都府) | 587 |
3位 | 西山温泉慶雲館(旅館・ホテル/山梨県) | 705 |
4位 | ㈱古まん(旅館・ホテル/兵庫県) | 717 |
5位 | 善吾楼(旅館ホテル/石川県) | 718 |
6位 | ㈱田中伊雅(宗教用具製造業/京都府) | 889 |
7位 | ㈱ホテル佐助(旅館ホテル/宮城県) | 1000 |
8位 | ㈱朱宮神仏具展(宗教用具小売業/山梨県) | 1024 |
9位 | ㈱高半ホテル(旅館ホテル/新潟県) | 1075 |
10位 | 須藤本家㈱(清酒製造業/茨城県) | 1141 |
※参考:株式会社東京商工リサーチ
老舗企業が多い理由
なぜ日本には長寿企業が諸外国に比べ各段に多いのでしょうか。どこが海外と違うのでしょうか?
平和が長く続いた
確かに先の大戦では、戦禍が全国に及びましたが本土空襲が本格化してから1年弱の間にすぎませし、全国民が逃げ惑ったということもありません。
そして、海に囲まれた島国ゆえ、異民族による全面的な侵略もありませんでした。
単一民族、多神教という事もあるでしょう。
地続きの大陸では異民族や一神教による争いで度々ジェノサイドが起きています。こういう戦乱が続くと、社会は断絶し企業活動も当然のことながら継続できなくなります。
必要とされる努力をしていた
時代が進むにつれ生活様式も変化し必要とするものも変わっていきます。旧来の商品だけにしがみついていたら、これらの企業は時代の波を乗り越えられなかったでしょうが、「伝統は革新の連続」という言葉があるように、伝統技術を現代の必要とする新しい製品に生かし続けてきた企業、つまり“世の中に必要とされる”ために努力を続けてきた企業が老舗として今も続いているのではないでしょうか。老舗企業は、以外にもチャレンジングなんだとか。
確固たる理念・家訓がある
以前、日経新聞が新設法人8万社の存続率を調査したところ、1年後には60%に、10年後には5%との結果が出ました。つまり10年続いた会社は、20社に1社しかなかったことになります。
これら多くの会社が続かなかった理由は“確固たる理念がなかった”ということに行き着くそうです。
やはり、理念・家訓があるからこそしっかりと受け継がれ、そして、後継者を育てることを大事にしてきたからこそ何代も続くことができたのでしょう。
理念・家訓があるから“自分たちは何屋さんか?”という本業に徹し“自分たちの強みを生かせない分野には手を出さない”という無理無謀な投機に走ることはないとも言えそうです。
そして“お天道様が見ている”という言い方にもあるように老舗企業は「My神社」を祀っているところが多いのだとか。清く正しい経営をしなければ、罰が当たりそうですね。
出典:長寿企業経営の秘密とは?
最後に
産業別では、100~300周年のトップは製造業で社員の人数がそんなに多くないという特徴があります。
経営者と社員がもっと近くそして信頼があり人を大切にする、法人を“家族”として捉えてきたことも考えられます。
法人と個人とはあくまで契約、企業とは最小限の投資で最高の利益をめざすもの、なので儲からない会社は長く商売をする前にさっさと店仕舞いをしてしまう、そんなアメリカの発想より、風土風習に合ったジャパニーズスタンダードでいいのでは、と思ってしまいますがどうなのでしょうか。
そして、短期的な利益増よりも、継続すること永続性に価値を置いているのではと感じる「老舗」、世界の中でも日本独自のものなのかもしれません。
暖簾を下した経験がある自分にとっては、ぜひ末永く暖簾を守ってほしいと願うばかりです。
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