昭和レトロな玩具・家電・雑誌・家具・建物などなどをご紹介

西洋式和菓子な国民的ケーキ「ショートケーキ」

西洋式和菓子な国民的ケーキ「ショートケーキ」

ショートケーキとは、スポンジケーキの間にホイップクリームや果物を挟んで重ね、表面にもホイップクリームや果物を飾りつけたもの。主に日本では、いちごを用いたストロベリーショートケーキを、また「ケーキ」と言えば、このショートケーキを指すことが多く、海外では「Japanese (style) Strawberry Shortcake」などと呼ばれ、実は日本生まれだそうです。

年代別に主なスイーツの流行では、1970年代…たいやき・レアチーズケーキ、1980年代…いちご大福・クレープ、1990年代…ナタデココ・ティラミス・パンナコッタ、2000年代…ドーナツ・ロールケーキ・バウムクーヘン、2010年代…パンケーキ・かき氷など。
なぜか、ショートケーキは流行っていませんが、最もポピュラーでケーキ屋やカフェでは外せない一品になっています。なので、気になり調べてみました。

ショートケーキ、ホールケーキ

日本の洋菓子のルーツは、室町時代(16世紀中頃)にポルトガル人やスペイン人により砂糖や卵を用いたカステラ等の南蛮菓子が渡来したことに始まります。
その頃、イギリスでショートケーキのルーツとなった、クッキーやビスケットのような生地で作られたケーキができたようです。これが17世紀にアメリカに伝わりパン・クッキーも生地になり、フルーツ味のソーダジュースを生クリームに入れる形式になります。
つまり日本式のショートケーキとは別物だったようです。

それがいつ頃、どのように生まれたのでしょう。
もっとも有力なのは、イギリスやアメリカのショートケーキをヒントにして作られたという説です。
ショートケーキの語源には、いくつかの説があります。ショートの「short」は“サクサクした”という意味の形容詞で、実際にイギリスではショートニングを加えて焼き上げた、サクサクとした食感が特徴のショートブレッド(スコーンのようなビスケット生地)を土台にして、クリームやフルーツを飾った菓子がショートケーキと呼ばれています。

イギリス式のショートケーキ
ビスケットを用いたイギリス式のショートケーキ一例
アメリカ式のショートケーキ
ムースを用いたアメリカ式のショートケーキ一例

日本では、円筒形のケーキが切り分けて販売されている「短いケーキ」だからショートケーキと考えている人も多い…(自分だけ?)、違ったかも(汗。
他には、「短い」という意味で、苺や生クリームの足が早い(長持ちしない)から、もしくは短時間で作れるから、という説などがあるようだから、日本人の勘違いも当たらずとも遠からずかも(遠いか…)。

ちなみに、ケーキは英語でも「cake」ですが、cakeは古ノルド語(古北欧語)の「kaka」(ホットケーキみたいな形のパンかと思われ、たぶん硬くてまずいパンだったはず)から来ているようです。ただ、rice cake(餅)やfish cake(カマボコ)をcakeとか言われても、日本人は食欲がなくなるのでお許し願いたい…(誰に許してもらうのやら)。

そのイギリス式ショートケーキを日本人向けにアレンジし、ショートブレッドをカステラやスポンジケーキに置き換えたものが、現在もよく知られる日本式ショートケーキの原型だと言われています。
ショートケーキの名は、1889年(明治22年)の『和洋菓子製法獨案内』に「Derby short cakes(デルビー ショート ケーキ)」というクッキー状のお菓子が登場しています。そして、1905年(明治38年)の『欧米料理法全書』に掲載された「ストロベリー リッチ ショート ケーキ」と「フルーツ ショート ケーキ」がパウンドケーキのような生地だったようで、つまり明治時代後半にはスポンジ状のショートケーキがすでに登場していました。

それ以降は、サクサクした生地のものも時折登場しながら、スポンジ状の生地を使ったものが大半になっていき、1922年(大正11年)頃、不二家からアメリカのケーキ(スコーンのようなビスケット生地)をアレンジしたショートケーキが発売されます。発売当初のイチゴの有無は定かではないものの、バタークリームをフルーツの果汁やチョコで味つけをしたり、フルーツやシロップづけの果実を使ったりと多様なアレンジがされていたという記録が残っています。
また、1924年(大正13年)に創業したコロンバンは、フランス風のスポンジケーキ(生地にアーモンドペーストが入っている)をアレンジし当初からイチゴを載せていたショートケーキを発売します。
ショートケーキの土台は、発売当初はカステラ生地もしくはカステラに近い配合のものだったようです。
ただ、このスポンジケーキ+ホイップクリーム+イチゴの日本式ショートケーキを一般に広めたのは不二家ですが、発案者が誰なのかは伝わっていません。

こうして日本独自の形となったショートケーキですが、広まるのは30年以上後の冷蔵設備が一般家庭に普及する1955年以降となります。なお、この頃には生クリームケーキの保存が容易になり、バタークリームから売れ筋が変化していきました。

ショートケーキ

現在では、各ケーキ屋がスポンジのキメ細かさやクリームの口溶け、苺の種類やカット法など、様々な工夫を凝らして独自色を出していますが、“スポンジケーキ+ホイップクリーム+イチゴ”の基本は変わりません。
スポンジ生地の方が好まれるようになったのは、おそらく南蛮菓子として伝来したカステラが日本人の好む菓子として受け入れられ親しんでいたためと考えられます。
苺に関しては、当時のは今よりも酸味が強め、それが甘いスポンジ生地とクリームにマッチしたから、苺がショートケーキに使われるようになったそうですが、白地に赤という、日本国旗の日の丸に象徴される色づかいでなじみやすかったかもしれません。
様々なケーキが並ぶようになった今でも、この紅白の色の取り合わせのショートケーキは、何気に誕生日のケーキとして、あるいはクリスマスのケーキとして、ハレの日の食卓を彩る主役であり続けています。

日本では「洋菓子四天王」に、ショートケーキ、プリン、チーズケーキ、シュークリームが挙げられますが、ショートケーキを分類するなら「西洋式和菓子」になるのかもしれませんね。

蛇足ですが、日本の円形ケーキのサイズは、どこのケーキ屋でも「~号」という単位で表示されています。ケーキ本体の直径を表していますが、この単位は、1893年(明治26年)に統一された長さを測る単位である「尺貫法」から由来しているそうです。もしかして、以前は「寸(1寸は約30.3mm)」や「尺」を用いてきた尺貫法にかわって「号」で大きさを表す花火からきているかもしれません。花火もハレの日に合いますしね。ちなみに、5寸=花火5号玉=約15cmになります。
尺貫法の詳しい記事はこちら→「文明は計ることから始まった」のかもしれない

出典:ショートケーキ
出典:家庭画報.com
出典:Tokyo甘味物語
出典:1分で読める!! [ 違いは? ]
出典:日本語を味わう辞典

テキストのコピーはできません。