自分だけの小さな書斎「文机」
机・文机・座机の歴史
文机(ふづくえ)とは、床に直接座って使うタイプの背の低い机。字を書いたり本を読んだりするための座卓。別名「書机(しょづくえ)」や「座机(ざづくえ)」と呼ばれます。
“机(つくえ)”という言葉は「古事記」や「日本書紀」にも書かれており、もともと食べ物を入れた食器を乗せる台のことを指しました。
筆記用のものが現れたのは、経机(きょうづくえ/読経の際、経典をのせる小さな机)がつくられた奈良時代で、物を乗せる台全般を“つくえ”と呼ぶようになります。それらの中で書き物や読書をするためのに使うものを、“ふみつくえ”や“ふづくえ”と言うようになりました。
平安時代初期には写経や公務など公の場で使用され、後期になると貴族の愛用品となり個人でも使用するようになります。
鎌倉末期から室町時代には建物の一部に壁から張り出して設けられた造り付けになった出文机(だしふづくえ)が現れ、やがて付書院(つけしょいん)へと発達していきました。
この付書院が設けられた部屋あるいは建物が書斎にあたり、書院または学問所と呼ばれていました。
付書院とは、床の間わきの縁側に張り出して設けた出窓のような部分、文机ほどの高さの板張りの前方に明かり障子をつけたものです。
書院(書院造)は読んで字のごとく書物を読むためのスペースで、造り付けの机の上で書物を読む書斎としての機能が期待されていたのです。障子窓は書物を読みやすいように光を取り入れるためのものでした。
江戸時代に入ると、寺子屋や私塾が発達し、子供たちも読み書きや算盤を習うようになり、庶民の間でも文机は普及していきました。
ちなみに、この書院が、独立した部屋「書斎」として定着するのは、明治以降だそうです。
しかし、世の男性で私的空間であり逃避空間の書斎を持っている人は少ないと思われますが、おそらく部屋の片隅の書院ぐらいではないでしょうか。
くつろぎのデスクワークに
文机は単に和室の机としてだけでなく、椅子を必要としない座机としてその使い勝手の良さが見直されています。
サイズが小さめで場所を取りませんし別の部屋への移動も簡単、折り畳み式もあるので使わない時は物置や部屋の端に収納することができ省スペース、椅子を使う机に比べて高さが低いので圧迫感がなく、狭い日本の住宅事情の理にかなったとても便利な家具なのです。
そして、一人暮らしの家や和室のちょっとした作業用机として、またリビングのテレビ台として、アンティークなお部屋づくりに、昭和レトロな部屋とか色々と活用できそうです。
今やすっかりデスクと椅子の生活スタイルに慣れてしまうと、文机は新鮮で魅力的に感じるのではないでしょうか。
自分も文机にパソコンを置いて畳に座って作業をしていますが、これが落ち着くのですよね。これも小さな書斎かな。
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