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米国大衆文化の「ハロウィン」とは何?

米国大衆文化の「ハロウィン」とは何?

ハロウィン(ハロウィーン)というと、数年前から渋谷で大騒ぎして問題になっているイメージですが、考えてみればオタク文化のコスプレ願望を満たすべく、ハロウィン仮装行列が過熱したのは当然のなりゆきだった、ともいえそうです。
しかし、なぜまたこんな関係のない行事が流行りだしたのか…クリスマスも同じですが恐らく深くは考えてはなく、なんだか楽しそうだお祭り好き日本人のなせる業ではないか、と思ってしまうのですよね。クリスマスのお話はこちら→年中行事となった日本型クリスマス
ということで、決して日本の年中行事になってほしくないハロウィンの事について、ネガティブイメージを払拭すべく調べてみました。

ハロウィングリーティングカード
1900~1920年代のハロウィングリーティングカード。出典:Flickr

毎年10月31日に行われるハロウィンは、2000年前の古代ヨーロッパの原住民ケルト人の風習・古代の祭り「Samhain(サウェン、サワーン)」がルーツとされています。
北アイルランドのデリーが“ハロウィン発祥の地”といわれていて、今でも世界最大級のハロウィンカーニバルが開催されることで知られています。

収穫期の終りと冬の始まりを祝うお祭り「Samhain」は、一年の後半の始まりを意味しケルト人のアイルランドでは夏は10月31日(ケルト暦の大晦日に当たる)に終りました。
この祭りの晩は妖精・精霊や怪物、死者の霊等、常世(とこよ/死後の世界)の住人が活動する日でもあるとされて、移り変わる際に世界の境界がぼやけると考えられていたようです。なので、この日は作物や動物を捧げ1年の収穫を感謝するとともに、たき火をたき仮面を被るなどして魔除けにし、仮装は魔物に似た装いをすることで彼らの仲間と思わせ身を守るため、また追い払うためのものでした。

7世紀頃、キリスト教では11月1日を「万聖節(ばんせいせつ/すべての聖人と殉教者を記念する日=諸聖人の日)」と定められ、この万聖節の前夜祭と古代ケルトの伝統行事が結びついたのがハロウィンの起源と考えられています。
先祖の霊を迎え悪霊を退散させるという点では、日本のお盆の期間に行われる迎え火や盆踊りなどと、ほぼ同じ趣旨の行事だといえるでしょう。

ハロウィングリーティングカード
1900~1920年代のハロウィングリーティングカード。出典:Flickr
ハロウィングリーティングカード
1900~1920年代のハロウィングリーティングカード。出典:Flickr

「Halloween」は、“All Hallow’s Even”を短縮された言い方で、「万聖節の前夜」という意味、「Hallowe’en」とも表記されます。伝統色は黒色(闇を表わす)とオレンジ色(収穫を表わす)だとか。

アメリカにハロウィンが上陸したのは19世紀、ヨーロッパからの移民の特に1845年から続いたジャガイモ飢饉が大きな原因の一つされるアイルランド系の移民が急増した頃、公式行事として最初に祝ったのは1924年ミネソタ州アノカ郡、と云われています。

まるで強盗みたいだが、“Trick or Treat(トリック・オア・トリート/お菓子をくれないと悪戯するぞ)”を歓迎する人は玄関をハロウィンぽく飾り付けて電気をつけておき、子どももそれを目印に訪問することになっています。子どもが訪問して“Trick or Treat!”と叫んだら、その家の住人は“Happy Halloween!”と返してお菓子を渡す習わし。
この習慣は、「仮装をした人々(子どもや若者)が家々を回り、幸運をもたらす代わりに食べ物やコインを貰う(Samhainの祭り)」と、キリスト教の伝統行事で万聖節の翌日11月2日に行われる「All Souls’ Day(死者の日)」の「souling(ソウリング)」という同様な風習が元になっていて、“Trick or Treat”と言う掛け声(?)等の細かい点は20世紀に入ってからアメリカで生まれたらしく、1927年のカナダの文献に記録されたのが最初だとか。
1950年代には“Trick or Treat”の合言葉が製薬会社や映画会社、テレビ局などの仕掛けもあり普及したようです。
日本で言う“なまはげ”や“獅子舞”、“ちょろけん”等の「門付(かどづけ/人家の門口に立って芸能を見せ報酬を受ける芸能と芸能者)」に近いのかもしれません。

ハロウィンコスチューム
1900~1920年代の雑誌かカタログ内のハロウィンコスチューム。出典:Flickr
ハロウィンコスチューム
1900~1920年代の雑誌かカタログ内のハロウィンコスチューム。出典:Flickr

ハロウィンのシンボル、カボチャの中身をくりぬいて中にロウソクを立てた「ジャック・オー・ランタン」、元々はカボチャではなくカブで、カブの一種「ルタバガ」という根菜をくり抜き、提灯にして魔除けとしていました。アメリカに伝わった時、カボチャの生産量が多かったため置き換わったようです。
アメリカで“pumpkin”はハロウィンで使われる橙色のカボチャ(食用には向かない)のこと、一説にはアメリカで販売されるカボチャ(パンプキン)の99%がジャック・オー・ランタンに使われるという。
現在では、アメリカのハロウィンシーズンはクリスマスに次いで購買意欲(最も多い金額が仮装用コスチューム代)が高まる季節とされ、“Halloween effect(ハロウィン効果)”という10月31日のハロウィンを境に株価が上昇することが多いとか。

ハロウィングリーティングカード
1900~1920年代のハロウィングリーティングカード。出典:Flickr

日本においてハロウィンが広く知られるようになったの一因として1982年の映画『E.T.』(話の舞台となった季節がちょうどハロウィン)があり、イベントが最初に行われたのは、キデイランド原宿店がハロウィングッズ販売促進の一環として1983年10月に行われたハロウィン・パレードとされています。以来表参道は日本のハロウィンの本家とされ毎年パレードを開催しているとか。
しかしこの頃は、意味不明な子どものお遊びにつきあうご近所さんもなく、一部の物好きな親たちが、いやがる子どもたちにアメリカ風のハロウィン行事を押し付けている程度で、ながらくハロウィンはおめでたいアメリカ人の行事として認識されるにすぎなかった…。

ハロウィングリーティングカード
1900~1920年代のハロウィングリーティングカード。出典:Flickr

1997年には、東京ディズニーランドでハロウィンパレードが初めて行われたことで各地のハロウィンイベントが増加し、また同時期の「ハリーポッター」シリーズが大ヒットとなった影響により“魔法使い”に関心が高まったことが追い風となってハロウィンの知名度が上昇、また日本における10月の全国的に有名な祭事に恵まれなかった(運動会か稲刈りぐらい)ことが幸いして現在では10月の代表的イベントといえばハロウィンというほどになっています。

もちろん、その陰には、クリスマス・バレンタインデーに次ぐかそれ以上の売上を稼ぐ重要な商戦と位置付けた菓子業界、あちらで盛大に催されている路上の仮装行列イベントを日本でも流行らせようともくろんだ仕掛け人など、暗躍していたことは言うまでもない。
そのねらいは見事にはまり、パーティグッズやカボチャ・お菓子の売り上げ増に貢献し、おめでたい連中が路上の仮装にとびつき、ここ数年異常な盛り上がりをみせています。

ただしこういった現在広く知られる形のハロウィンは、概ねアメリカで19世紀以後に通俗的行事として培われたものでアメリカの大衆文化といってよく、厳密にはキリスト教のお祭りとは言い切れず、宗派や文化圏によって無視している地域もあることは確かです。
一説には、教会は先行する異教の祭(古代の祭りSamhain)を完全に潰そうと考えていたが、それが挫折して残ったものが民衆の祭(ハロウィン)になったとか。

しかし日本での経済効果で見ても、既にバレンタインと並ぶ、あるいは超えてクリスマスに次ぐ程だというデータもあるらしいから、好むと好まざるとにかかわらず良いのかもしれませんね。今年は静かなハロウィンになりそうですが。

出典:ハロウィン/Wikipedia
出典:ハロウィーン/コトバンク
出典:ハロウィン/ピクシブ百科
出典:日本語を味わう辞典

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