健康に気をつける酔っぱらいに人気の酒「焼酎」
居酒屋で飲むのは大抵ビールから日本酒でしたが、鹿児島の友人に勧められて初めて口にしたのが芋焼酎の薩摩白波。独特の臭みがあるので、ちょっと苦手でしたが慣れれば普通に飲めるように。ですが最近は味わいが軽く癖が少ないそば焼酎が気に入っています。
焼酎は他の蒸留酒同様、アルコール度数が強い反面、発酵したものをそのまま飲む醸造酒の味わいに欠けるような…(個人の感想です)。けれども、糖質0・たんぱく質ゼロなど栄養がほとんどない飲料であるため、健康に気をつける酔っぱらいに近年人気の酒であります。しかし、せっかくアルコールを強くしたのに、大抵の日本人は焼酎を水やお湯などで薄めて飲んでおり、せっかく栄養素がないのに梅干や果汁を入れ、さらに、たいして合いもしないような肴やつまみ(個人の感想です)を大量に食しながら飲み、早く酔えて健康によいという焼酎の効能を台無しにしているような(とやかく言うことではないですね…失礼)。
ということで、「焼」は火を表し「酎」は蒸留酒を表すという、文字通り、燃えるように強く胸焼けする焼酎について調べてみることにしました。
主に焼酎を温めるために用いる扁平で注ぎ口の付いた陶磁器の銚子・急須、黒千代香(くろぢょか)。厚手の黒焼きで作られているので直接火にかけても割れないなど耐久性があります。千代香は当て字で、注ぎ口がイノシシの牙に似ているため猪牙(ちょか)から名前が付いたとか(諸説あり)。
日本の代表的な蒸留酒の一つ「焼酎(しょうちゅう)」、起源は正確には分かっていないようですが、沖縄では南蛮(タイ)から伝来したものと伝承されています。室町時代の1477年には沖縄に南蛮焼酒のあったことが漂流報告で知られています。
沖縄に伝わった南蛮焼酒はのちに泡盛(あわもり)と呼ばれるようになりますが、この製法はやがて薩摩(鹿児島県)に伝わり、焼酎となったとされます。
鹿児島県伊佐(いさ)市の郡山八幡神社の社殿から発見された墨書木片(大工の落書き)で、“けちな座主(施主)で、一度も焼酎をふるまってくれずガッカリした”という内容があったことから、1559年にはこの地方で「焼酎」が飲まれていたことがわかり、「焼酎」の呼称についても日本国内に残存する最も古い文章となっています。なお、「焼酎」の語は中国にないとか。
沖縄・鹿児島の最初の焼酎は、米あるいは黍(きび)・粟(あわ)などの雑穀を原料として麹を加えて仕込む「醪取(もろみど)り」でしたが、17世紀後半には他地域にも普及して、清酒の搾り粕(かす)を蒸留する「粕取り」も行われました。いも焼酎が登場するのは甘藷(かんしょ/サツマイモ)が伝来し、普及した江戸後期の18世紀以降のことでした。
江戸時代には、焼酎はみりん、白酒(しろざけ)作りに用いられ、さらに草根木皮を加えて長寿薬として屠蘇(とそ)酒や保命酒(生薬を含む薬味酒)などがつくられたそうです。
また、この時代、酒好きの武家などは家庭用の蒸留器を所有していたとか。これは日本酒を蒸留して焼酎にする器具で、早く酔いたいためにもったいないことをするものだと思いますが、その日本酒そのものがクソまずければ、それもアリだったかもしれません。
なお、醪(もろみ)とは、原料と麹・水・酵母を発酵させた、かゆ状の酒のもと。原料が米の場合、これを袋に入れて搾ると液体の清酒と固形の酒粕に分離、蒸留すれば米焼酎になります。「醪取り焼酎」とは、穀物を原料とする醪を蒸溜して造られる焼酎のこと。芋焼酎や米焼酎、麦焼酎など、現在国内で造られている焼酎のほとんどがこれに当たります。
甕壷仕込み(かめつぼじこみ)とは、1次仕込み(米麹と酵母を混ぜて醪を作る工程)も2次仕込み(その醪に原料を混ぜわせて2次醪を作る工程)も、地中に埋めた500~600リットルの甕壷で仕込んで造る焼酎。地中の温度は低音で一定しているから埋めこまれているとか。
2次仕込みでアルコールが生成された醪を1回のみ蒸留したものを単式蒸留焼酎(乙類焼酎)、いわゆる規定された原料を使用し、水以外の添加物を一切使用せずに造られた本格焼酎のことを指します。単式のため原料本来の風味や旨み成分が生きていることが特徴とか。
麹は、明治末期までは日本酒用の黄麹(きこうじ)菌を用いていましたが、九州や沖縄地方は温暖なために発酵を阻害する乳酸菌などが増殖しやすく、これを防ぐためにクエン酸を多くつくる黒麹菌(河内菌)を官僚・科学者の河内源一郎(麹の神様と呼ばれる)が大正時代初期に発見、また黒麹から突然変異した白麹も発見し、これらの麹を用いることにより焼酎の品質を飛躍的に向上させました。
余談で、1939年~40年には朝鮮・満州へ焼酎造りの指導を行い、このことにより韓国焼酎やマッコリ(焼酎ではないけど、はっきり言って“にごり酒”のが美味しい…個人の感想です)に使用されている麹は河内菌を使い生産されています。
1842年(天保13年)京都・伏見で創業の酒・焼酎メーカー。1977年(昭和52年)に焼酎のイメージ革新をねらった「純」を、1984年(昭和59年)には「タカラCANチューハイ」を発売しブームを起こしました。
1846年(弘化3年)三重県四日市で創業の宮﨑本店が造る「キンミヤ焼酎」は関東地方(主に東京)の居酒屋でも親しまれている甲類焼酎ブランドで、2020年全国の焼酎・泡盛メーカーの中で10位となっています。
木桶や甕壷を使い製造に単式蒸留器を用いるのは昔ながらの方法ですが、1895年(明治28年)頃にイギリスから原料を連続的に投入しながら蒸溜する連続式蒸留機が輸入され、高純度アルコール(95%)が安価に大量生産できるようになると、1910年(明治43年)には、これに加水して所定のアルコール度数に調整したものを焼酎とすることが認められ「新式焼酎」として広まりました。
なお、この製造法で造られる焼酎を「連続式蒸溜焼酎」や「甲類焼酎」と呼びます。糖蜜(砂糖製造の際に残る黒褐色の残液)をおもな原料に、その発酵液を連続式蒸留機で蒸留するため、純アルコール水溶液に近いものとなります。
しかし、税法上アルコール度数36度未満(乙類は45度以下)と規定されているので、せっかくの高純度アルコールを水で薄めて商品化しており、酔っぱらいの夢をだいなしにしています。また、アルコール純度が高い分、原材料の風合いがほとんどなくなっているので(つまりほぼ無味。売る方は「クリアでピュアな味わい」てなことを言う)、だったら安くてまずい材料でいいじゃないかと、酒粕や糖蜜などほとんど廃棄する寸前のゴミな材料を使っているため(個人の偏見が含まれた記述です)、販売価格は乙類より総じて安いです。
ちなみに、風味を増すために乙類を混和してごまかした、乙類を50%以上95%未満混和したもの「乙甲混和焼酎」や、乙類を5%以上50%未満混和したもの「甲乙混和焼酎」も安く売られています。
一方、乙類は日本在来の製法による焼酎で原材料の風味が強く残るので、芋焼酎・麦焼酎・米焼酎・黒糖焼酎など材料を売りにした商品が出回っており、酒屋にはブランド焼酎が並んでいます。とはいえ、芋焼酎の芋の風味といったって、ジャガバターのような食欲を刺激する味わいがあるわけではなく、何の味なのかよくわからないただのクセであり(個人の感想です)、ストレートで飲んで楽しめるような酒ではないような(個人の強い偏見に基づく記述です)。
ですが最近の研究によって、単式蒸留焼酎(乙類)には、血液中の血栓を溶かす線溶(せんよう)酵素(プラスミン)という物質を増加させる作用があることがわかってきました。つまり、単式蒸留焼酎を適量飲むことは、血液の流れをよくして血栓症を防ぎ、心筋梗塞や脳梗塞の予防につながるそうです(確かに、甲類は肌が荒れると聞いたことがあります)。
なので、どうせ飲むのなら、水割りにしろお湯割りにしろ乙類の本格焼酎をチビチビと頂くのが良さそうですね。
日本酒の記事はこちら→日本酒が薄いサワーみたく飲めた江戸時代、などなど
共に飲み交わす「日本酒文化」
出典:焼酎/コトバンク
出典:焼酎
出典:焼酎を製造法で分類すると?
出典:日本語を味わう辞典
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