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もはやスーパーソウルフードになっちゃった「焼き鳥」

もはやスーパーソウルフードになっちゃった「焼き鳥」

居酒屋の定番メニューでもあり、スーパーやコンビニや屋台でも販売している今や日本人の国民食かもしれない「焼き鳥」、実はそのルーツは江戸時代にありました。
焼き鳥の料理方法として初めて紹介されたのが江戸時代も前半の1689年(元禄2年)に刊行された料理書「合類日用料理抄(ごうるいにちようりょうりしょう)」、それによると
「鳥を串に刺し、塩を少々ふりかけ焼き、醤油のなかに酒を少し加えたものを焼いた鳥につけ、もう一度タレをつけたら乾かないうちに座敷に出す(意訳)」
とあり、江戸時代の初期には「焼き鳥」の料理法はほぼ完成していたようです。
しかし、この当時食べられていた鳥は野鳥でした。

いつから食べられていたか

日本には存在していなかった鶏(ニワトリ)が伝えられたのは、新石器時代末(紀元前3000~2000年頃)に中国からといわれています。弥生時代の中期から後期(0~100年頃)にかけての遺跡からは鶏の骨が出土していますが、その後、夜明け前に規則正しく鳴く刻を告げる鳥として、また闘鶏や神事に飼育され、仏教伝来(6世紀)による家畜の保護もあり、食用の動物といえば野鳥などに限られるようになりました。それ以降、主に雉子(キジ)・鴨(カモ)・雁(ガン)等、小鳥の雀(スズメ)や鶉(ウズラ)などを食するようになります。

ちなみに、平安時代の始めに中国から現在の「小国鶏(ショウコク・おぐにどり)」の祖先が、江戸時代にはタイから「大軍鶏(オオシャモ)」、ベトナムから「矮鶏(チャボ)」、中国から「烏骨鶏(ウコッケイ)」の祖先がやってきて、その鶏は観賞用として珍重しました。江戸時代の後期には新品種もたくさん作られ、世界には250種以上の鶏がいますが、そのうち50種は日本鶏だという。そして15種と2グループは天然記念物に指定されています。

江戸時代前期、庶民に愛された鳥肉は“鴨”でしたが、元禄時代(1688~1704年)になると“軍鶏(シャモ)”や“鶏”が鍋として食べられるようになりポピュラーとなっていきました。
軍鶏鍋というと、坂本龍馬が暗殺された日に盟友の中岡慎太郎と食べようとしたことで有名ですね。
そんな幕末には、神社の参道で米作の妨げになる雀を中心に焼き鳥として売られるようになります。京都の伏見稲荷や雑司ヶ谷の鬼子母神では雀の焼き鳥が評判だったようです。
この頃、焼き鳥の屋台も出現しました。鶏料理はかなり高価だったみたいで、材料は軍鶏鍋屋はじめ料理店で捨てられる鶏の端肉や内臓を串に刺して焼いていたそうです。また、牛鍋ブームがあった明治維新後は、牛や豚の臓物もあったとか。なので、鶏肉以外の豚肉や牛肉も“やきとり”というそうです。

歌川広重 画
「浄瑠璃町繁花の図」1852年(嘉永5年)歌川広重 画(右上にシャモ鍋屋が描かれています)出典:メトロポリタン美術館

焼き鳥=大衆料理になったのは昭和30年代、米軍から食肉用ブロイラー(短期間で成長するように開発された肉用小型若鶏)がもたらされると鶏の価格が安くなり、身近な食材となって普及していきました。この頃から大衆焼き鳥店が多く登場、サラリーマンが会社帰りに立ち寄る場所として駅の近くに、いわゆる“赤提灯”と呼ばれる焼き鳥屋が目立つようになり、庶民の定番人気メニューにまでなりました。

焼き鳥、居酒屋

時代を経ると、安さだけではなく味の良さも重要になってきて、こだわりの地鶏を取り扱うお店も増えていきました。そして焼き鳥は日本料理として海外でも認識されるようになり、全世界に焼き鳥人気は拡がっているようです。
なお、欧米で“yakitori”が初めて英語として現れたのは1962年(昭和37年)のことだとか。

焼き鳥メニュー「ねぎま」

「ねぎま」とは葱とマグロを一緒に串で刺した煮物や焼き物のことでした。マグロ(トロ)は、現在のように多くの人が有り難がるようなものではなく庶民の食べ物でした。マグロと葱の「ねぎま」は庶民に深く浸透しており、そのスタイルが鶏と葱を串に刺して焼く焼鳥の「ねぎま」に似ていることから同じ名で呼ばれたそうです。(おそらく幕末期)
モモ肉やムネ肉を葱と交互に挟んだスタイルを、関西では「鳥ねぎ」「とり串」といい、関東で「ねぎま」と呼ばれています。関東の魚食文化はマグロ中心だから「マグロ鍋=ねぎま」から派生したとか。

宇宙食になった焼き鳥

1970年(昭和45年)に世界初の“やきとり缶詰”として発売され2020年で50周年を迎えた「やきとり・たれ味」(株式会社ホテイフーズ)、2019年10月25日にJAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)から「宇宙日本食」に認証されたとか。商品名は「ホテイやきとり(たれ味)宇宙用」と「ホテイやきとり(柚子こしょう味)宇宙用」、これは2020年夏頃までスーパーやコンビニで実際に販売されているそうです。食べてみたい!

タレか、塩か。

タレ派では「店によってタレの味が違うので、それも焼き鳥の楽しみの一つだと思う」など、塩派は「オレは塩しか食べない!」という原理主義のおじさん、「素材が良い時は塩に限る。肉のうまさが一番ダイレクトに楽しめる」など、日和見派は「レバーは塩で他はタレ」とか「高級店では塩、大衆店ではタレ」、「お店の人が一番よい食べ方を知っているので、お任せしたほうが安心」、「焼き鳥の種類に合わせて決める」などなど、選択権が食べる側にあるから“焼き鳥の味付けを何にするか”は繰り返し語られ、常に意見が分かれます。
とはいえ、ある調査によると「焼き鳥は好きか?」という質問に20~70代まで、いずれの年代で「大好き・まあまあ好き」の割合は9割を軽く超えていて、つまりほとんどの人から支持を得ていて、日本人はみんな焼き鳥が大好きということなのでしょう。

焼き鳥、タレ
焼き鳥、タレ焼き
焼き鳥、塩
焼き鳥、塩焼き

そんな侃々諤々と語り合っちゃう焼き鳥、昔はタレ焼きが主流だったそうです。鶏肉に限らず、食肉は一般的に飼育期間が長ければそれだけ肉に旨みが増すそうで、ブロイラーは肉質こそ柔らかいですが短期間で成長するので肉の味わい自体は淡泊なのだとか。だから、素材の味をそのまま楽しむ塩焼きよりも、香ばしい風味が加わるタレ焼きのほうが適していたのだそうです。
庶民の味、大衆焼き鳥に対して、高級地鶏を使用しその銘柄を前面に打ち出すという高級焼き鳥が昭和の終わり(バブル時代)頃に誕生します。
鶏の品種の指定、飼育期間が長くて適度に運動もしているので、弾力がしっかりあって旨みの強い高品質な鶏肉の個性が強い味わいになり、こうした高級店では、タレ焼きよりも鶏肉の味わいを生かすために塩焼きで提供するケースが多いとか。なので“食通”、あるいは“食通を気取りたい人”のほうが塩焼きを好む傾向があるのかもしれません。
なお、8月10日は「焼き鳥の日」、どちらにせよ自分の好きなように食べるのが一番ですよね。

ちなみに、自分は赤提灯がぶら下がる大衆居酒屋で、“かしら”と“つくね・はつ”を塩で頂くのが好みかな。“通”ではありませんが(笑。さて皆様はどちらがお好き?

出典:やきとりの歴史/全国やきとり連絡協議会
出典:焼き鳥
出典:株式会社ホテイフーズコーポレーション

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